中国の歴史認識はどう作られたのか

汪 錚著/伊藤 真訳
2014年5月16日 発売 在庫なし
定価 2,860円(税込)
ISBN:9784492212165 / サイズ:四六/上/424

なぜ日本人はかくも憎まれるのか?
なぜ中国の若者にこれほどまで愛国主義が根付いているのか?
なぜ天安門事件以降、中国共産党政権は国民の支持を回復したのか?
なぜ中国はアメリカと日本に対して、これまでより強気の主張をするようになったのか?

本書では、天安門事件と冷戦終結を経た今日の中国の政治的変遷、大衆心理、外交政策を説明する上で、「歴史的記憶」が現代中国の国民的なアイデンティティの形成にどのような役割を果たしているか、また政治的にどのように利用されてきたのかを、中国育ちの在米国際政治学者が、膨大な資料から解き明かす。中国の公文書、スピーチ、インタビュー、歴史教科書、歌など幅広い資料から分析した気鋭の研究。

国際関係学会[ISA]イェール・ファーガソン賞受賞Never Forget National Humiliation: Historical Memory in Chinese Politics and Foreign Relationsの待望の邦訳!


【レビュー】
「現代中国の極めて重大な一面の貴重かつ活気あふれる解説である」
『フィナンシャル・タイムズ』

「タイムリーで、しっかりした研究調査に基づいており、
中国のナショナリズム研究の画期的な成果といえよう」
H-ネット・レビューズ

「毛沢東以後のナショナリズムと中国の外交政策の鮮やかかつ精緻な研究」
『チャイナ・クォータリー』

【本書「序章」より】
……本書のテーマは「歴史的記憶」であって「歴史」ではないことを明記しておきたい――歴史上何が実際に起きたのかについての本ではなく、中国人が「歴史」というものをどう理解してきたか、そして政治的支配層が「歴史」をどう作ってきたかを探るのである。集合的な記憶は、実際の出来事や事実に基づくのではなく、想像の産物であったり、人為的に構築されたものであることがきわめて多い。実際の過去の出来事と、それらに関する作られた言説――その違いを意識しておかなければ、両者のギャップを埋めることもできるはずがない。

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概要

なぜ日本人はかくも憎まれるのか? 在米中国人研究者が、「歴史の記憶」形成の政治利用の歴史に着目して分析した本格的研究。

目次

序章 「戦車男」から愛国主義者へ 
第1章 選び取られた栄光、選び取られたトラウマ
第2章 歴史的記憶、アイデンティティ、政治
第3章 「中華帝国」から国民国家へ――国恥と国家建設
第4章 勝者から敗者へ――愛国主義教育キャンペーン 
第5章 「革命の前衛組織」から愛国主義の政党へ――中国共産党の再構築
第6章 震災からオリンピックへ――新たなトラウマ、新たな栄光 
第7章 記憶、危機、外交
第8章 記憶、教科書、そして中国と日本の和解 
第9章 記憶、愛国主義、そして中国の台頭 

著者プロフィール

汪 錚  【著】
わん・じょん

中国雲南省昆明出身。アメリカのシートンホール大学ジョン・C・ホワイトヘッド外交国際関係大学院准教授。北京大学大学院修了後、アメリカのジョージ・メイソン大学にて博士号を取得。大学で教鞭をとると同時に、全米米中関係委員会委員などとして米中関係、東アジアの国際関係などを幅広く研究し、論じている。1990年代には中国の政府系シンクタンクで国際関係論、平和論、安全保障問題などを研究したこともある。

伊藤 真  【訳】
いとう まこと

時事問題、海外事情、現代史などのノンフィクションを中心に翻訳に従事。訳書に『告白』(C.R.ジェンキンス著、角川文庫、2006年)、『アフリカ 苦悩する大陸』(R.ゲスト著、東洋経済新報社、2008年)、『ペリリュー・沖縄戦記』(E.スレッジ著、講談社学術文庫、2008年、共訳)、『ダライ・ラマ 科学への旅』(ダライ・ラマ著、サンガ新書、2012年)、『ブラディ・ダーウィン もうひとつのパール・ハーバー』(P.グロース著、大隅書店、2012年)、『「見えない」巨大経済圏』(R.ニューワース著、東洋経済新報社、2013年)ほか。