雇用の変容と公的年金

法学と経済学のコラボレーション研究

西村 淳編著/上村 敏之著/金 明中著/四方 理人著/関 ふ佐子著/田中 聡一郎著/常森 裕介著/福島 豪著/藤森 克彦著/丸谷 浩介著/山田 篤裕著
2015年4月24日 発売
定価 4,180円(税込)
ISBN:9784492701416 / サイズ:A5/上/296

わが国の年金制度は、5年ごとに国勢調査を踏まえた人口推計、そしてそれに基づく財政再計算を行い、そのたびに少子高齢化が予想以上に進んでいるとして、負担の引き上げと給付の抑制を行う制度改革を長く繰り返し行ってきた。しかしながら、2004年改革におけるマクロ経済スライドの仕組みの導入、2012年における「税と社会保障の一体改革」によって基本的に年金財政の長期的な持続可能性は確保される仕組みとなっている。
しかし一方で、
○失業率の上昇と非正規雇用労働者の増大
○片働き世帯を数では上回る共働き世帯
○依然として残る女性労働力のM字カーブ
○高齢者の雇用延長と年金支給開始年齢の引き上げ
など、年金制度と一体的な関係にある雇用が大きく変化している。
年金制度は、雇用の不安定化にいかに対応できるのか?!
今後の課題は、年金制度の側から雇用や経済の活性化にいかに寄与できるかといった観点で検討を行い、雇用の不安定化などの社会経済状況の変化に対応した年金制度を構築し、信頼性を確立するとともに、持続可能性をより強固にすることである。そのためには、こうした課題への対応に向けた客観的・長期的な観点からの学術研究が求められている。
本書では、年金と一体的な関係にある雇用が大きく変化しており、年金のあり方に大きく影響してきているとの認識の下に、公的年金と雇用に関する実証研究・比較研究・課題別研究を総合的に検討を行なっている。

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概要

雇用の不安定化に年金制度はいかに対応できるのか? 経済学と法学のコラボレーションによる、実証・国際比較に基づく課題別研究。

目次

第1部 年金と雇用の実証研究
第1章 高齢者雇用と年金の接続
第2章 雇用と年金の所得課税
第3章 高齢者の所得格差と低所得問題

第2部 年金と雇用の比較研究
第4章 イギリスにおける「一層型年金」の創設
第5章 ドイツの年金保険の適用拡大
第6章 韓国における労働市場と公的年金制度
第7章 公務員の年金と雇用

第3部 年金と雇用の課題別研究
第8章 マルチジョブホルダーへの厚生年金適用
第9章 女性の年金権と雇用
第10章 年金給付の権利の規範的基礎としての雇用

著者プロフィール

西村 淳  【編著】
にしむら じゅん

1986年東京大学法学部卒業。2013年早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程修了、博士(法学)。厚生労働省勤務を経て、現在、北海道大学公共政策大学院教授。主要著書に、『所得保障の法的構造』(信山社、2013年)、『社会保障の明日(増補版)』(ぎょうせい、2010年)、『社会保険の法原理』(共著、法律文化社、2012年)、『希望の社会保障改革』(共著、旬報社、2009年)、『自立支援と社会保障』(共著、日本加除出版、2008年)など。

上村 敏之  【著】
うえむら としゆき

1999年関西学院大学大学院経済学研究科博士課程後期課程単位取得退学。現在、関西学院大学経済学部教授、博士(経済学)。主要著書に、『公的年金と財源の経済学』(日本経済新聞出版社、2009年)、『検証 格差拡大社会』(共編著、日本経済新聞出版社、2008年)など。

金 明中  【著】
きむ みょんじゅん

2006年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、ニッセイ基礎研究所生活研究部准主任研究員、日本女子大学非常勤講師。主要著書・論文に、「韓国における女性の労働市場参加の現状と政府対策――積極的雇用改善措置を中心に」(『日本労働研究雑誌』第643号、2014年)、『福祉と労働・雇用(福祉+α)』(共著、ミネルヴァ書房、2013年)、“Precarious Work in Japan,” American Behavioral Scientist, Vol. 57, No. 3(共著、2013年)、『労働経済学の新展開』(共著、慶應義塾大学出版会、2009年)、『地域における雇用創造――未来を拓く地域再生のための処方箋』(共著、雇用問題研究会、2008年)。

四方 理人  【著】
しかた まさと

2007年慶應義塾大学大学院経済学研究科単位取得退学、博士(経済学)。現在、関西学院大学総合政策学部准教授。主要論文に、「家族・就労の変化と所得格差――本人年齢別所得格差の寄与度分解」(『季刊社会保障研究』第49巻3号、2013年)、「非正規雇用は『行き止まり』か?――労働市場の規制と正規雇用への移行」(『日本労働研究雑誌』第608号、2011年)など。

関 ふ佐子  【著】
せき ふさこ

1993年東京大学法学部卒業、1998年北海道大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(法学)。現在、横浜国立大学大学院国際社会科学研究院教授。主要著書に『世界の医療保障』(共著、法律文化社、2013年)、『新講座社会保障法2 地域生活を支える社会福祉』(共著、法律文化社、2012年)、『社会法の再構築』(共著、旬報社、2011年)、『高齢者の働きかた』(共著、ミネルヴァ書房、2009年)、『希望の社会保障改革』(共著、旬報社、2009年)、『エイジフリー社会』(共著、社会経済生産性本部、2006年)など。

田中 聡一郎  【著】
たなか そういちろう

2008年慶應義塾大学大学院経済学研究科後期博士課程単位取得退学。現在、関東学院大学経済学部講師、修士(経済学)。主要論文に、「高齢者の税・社会保障負担の分析――『全国消費実態調査』の個票データを用いて」(『フィナンシャルレビュー』(共著:四方理人・駒村康平、第115号、2013年)、「市町村民税非課税世帯の推計と低所得者対策」(『三田学会雑誌』第105巻第4号、2013年)。

常森 裕介  【著】
つねもり ゆうすけ

2012年早稲田大学大学院博士後期課程修了。現在、武蔵大学非常勤講師、博士(法学)。主要論文に、「社会保障法における児童の自立――アメリカ貧困児童法制の総合的考察」(『社会保障法』第28号、2013年)、「生活保護制度における個人情報利用の限界――行政機関個人情報保護法八条の解釈を通じて」(『賃金と社会保障』第1594号、2013年)、「働く児童と教育を受ける権利――労働法制における就業と就学の両立に着目して」(『季刊労働法』第246号、2014年)。

福島 豪  【著】
ふくしま ごう

2010年大阪市立大学大学院法学研究科後期博士課程所定単位取得後退学、修士(法学)。現在、関西大学法学部准教授。主要著書に、『よくわかる社会保障法』(共著、有斐閣、2015年)、『障害法』(共著、成文堂、2015年)、『社会保険の法原理』(共著、法律文化社、2012年)など。

藤森 克彦  【著】
ふじもり かつひこ

1992年国際基督教大学大学院行政学研究科修了。同年富士総合研究所(現みずほ情報総研)入社。ロンドン事務所駐在(1996~2000年)を経て、現在,みずほ情報総研主席研究員、2011年日本福祉大学より博士(社会福祉学)。主要著書に、『単身急増社会の衝撃』(日本経済新聞出版社、2010年)、『構造改革ブレア流』(阪急コミュニケーションズ、2002年)。

丸谷 浩介  【著】
まるたに こうすけ

1998年九州大学大学院法学研究科博士課程退学、修士(法学)。現在、佐賀大学経済学部教授。主要論文に、「失業労働法の今日的意義――求職者法試論」(良永彌太郎・柳澤旭編『労働関係と社会保障法』法律文化社、2013年)、「イギリスにおける年金支給開始年齢の引き上げと『定年制』の廃止」(『海外社会保障研究』181号、2012年)など。

山田 篤裕  【著】
やまだ あつひろ

1999年慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。現在、慶應義塾大学経済学部教授、博士(経済学)。主要著書に、『最低生活保障と社会扶助基準』(共編著:布川日佐史、『貧困研究』編集委員会、明石書店、2014年)、『労働経済学の新展開』(共編著:清家篤・駒村康平、慶應義塾大学出版会、2009年)、『高齢者就業の経済学』(共著:清家篤、日本経済新聞社、2004年)。