LIVE講義 北朝鮮入門

礒崎 敦仁著/澤田 克己著
2010年11月12日 発売
定価 1,760円(税込)
ISBN:9784492211922 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:336


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2010年9月27日、金正日(キム・ジョンイル)総書記は、
金正恩(キム・ジョンウン)氏に「朝鮮人民軍大将」の称号を授与しました。



翌28日に開かれた朝鮮労働党代表者会と党中央委員会総会を経て、金正恩氏は党中央軍事委員会副委員長に選出されました。



北朝鮮は「金正恩氏が後継者に決まった」とは公式にいいませんが、事実上の後継者として内外にお披露目したということです。



北朝鮮はこれから、金正日総書記から金正恩副委員長への権力継承作業を本格化させていくのでしょう。



金正恩副委員長が後継者となっても、
北朝鮮が不透明な国家運営をしていることは変わりませんし、
北東アジア地域の安定を乱す最大の要因である現実も変わりません。



日本の安全保障を考える時には、
大国として台頭する中国とのつきあい方と同じくらい、
北朝鮮は大きな問題であり続けているのです。



権力の移行期というのは不安定なもので、
これまで以上に何が起きるかわかりません。
でも実は、北朝鮮のような独裁国家の場合、
明日なにが起きるかは予測できなくとも、
中長期的になにをしようとしているのか考察するのは
比較的容易だったりします。



はっきりしていることは、
北朝鮮も国際社会の流れと無関係ではいられないということです。



不可解に思える北朝鮮をめぐるさまざまな動きが、
実は、国際社会の動きと密接に連動しているのです。
冷戦時代の中ソ論争やデタント、ベトナム戦争、ペレストロイカと冷戦終結、
21世紀になってからの米同時多発テロとテロとの戦争は、
北朝鮮の内外政策に大きな影響を与えました。
国際情勢と朝鮮半島情勢のリンクの例は、
これ以外にもいくらでも挙げられるのです。




本書では、
こうした長期的展望を可能にする北朝鮮をめぐる底流の動きや
北朝鮮なりの論理を解説しています。
研究者と記者のコラボによって、
お互いの長所を生かし、足りない部分を補いながら、
わかりやすく客観的に北朝鮮の全体像を示していますので、
新聞やテレビで流れる北朝鮮関連のニュースを読み解く際の
理解を助けることになるでしょう。

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概要

金正日の後継者は誰か、なぜ核を開発するのかなど、北朝鮮の政治・経済・社会の基本情報から、TVや新聞では報道されない最新動向まで、北朝鮮の過去・現在・未来がまるごとわかる。

目次

第1講義 金正日は無能なのか
最高指導者=独裁者である金正日総書記が単なる
二世政治家と違うことや、後継者である三男の金正恩
党中央軍事委員会副委員長について学びます。

第2講義 なぜ拉致を認めたのか
総じて悪いイメージの北朝鮮ですが、地上の楽園
と呼ばれた時期もありました。北朝鮮に対する
イメージの変遷を日朝関係の歴史からひもときます。

第3講義 究極の格差社会
1990年代の経済危機や、一般市民の間で深まる経済格差、
大混乱を発生させた貨幣交換措置など、
経済の側面から北朝鮮の国内事情を解説します。

第4講義 平壌で流行る韓流
北朝鮮の人々が外国の情報を知ることができる
ようになるなど、1990年代の経済危機をきっかけに
大きく変わった普通の人々の暮らしを紹介します。

第5講義 体制が揺るがない理由
冷戦終結後も、金日成、金正日父子による独裁が続く北朝鮮。
なぜ金正日体制が簡単に崩壊しないのか、
北朝鮮の憲法や政治のしくみから考えます。

第6講義 統一へのためらい
開き続ける南北間の経済格差のために、
双方で本音では早期統一に及び腰になっている現状など、
北朝鮮と韓国の特殊な関係について解説します。

第7講義 なぜ中国は北朝鮮をかばうのか
メンツをつぶされても北朝鮮をかばい続ける中国。
投資も貿易も支援も中国頼り。日本人には不思議に思える
中国と北朝鮮の関係を解説します。

第8講義 核ミサイルの照準はどこか
いまや事実上の核保有国である北朝鮮。なぜ北朝鮮が核開発
にこだわるのかを理解するために、
核・ミサイル問題を中心に米朝関係を振り返ります。

著者プロフィール

礒崎敦仁
いそざき・あつひと

担当する講義に履修希望者が殺到する慶應義塾大学の人気講師。1997年に慶應義塾大大学院に入り、日本の現代朝鮮半島研究の第一人者である小此木政夫教授に師事して北朝鮮政治体制を中心に研究を始める。

その後、2001年から3年間は在北京日本大使館で北朝鮮担当専門調査員として北朝鮮情勢の分析などを担当。『労働新聞』をはじめとする北朝鮮メディアをじっくり読み込み、大使館での現場経験を通じて得た識見と独自の情報を加えて導き出した北朝鮮分析の確かさには定評があり、新聞やテレビでも大活躍している。

澤田克己
さわだ・かつみ

毎日新聞外信部記者。学生時代の1989年に延世大学(ソウル)へ留学してから朝鮮半島とのつきあいが始まる。1991年毎日新聞入社。岡崎支局、東京本社編集制作総センター、政治部を経て、1997年からは外信部で朝鮮半島を担当、1999年から2004年までソウル支局に勤務。

2005年からは朝鮮半島以外の世界も見てみようとジュネーブ支局に勤務するものの、2009年秋に東京へ帰る直前、金正恩副委員長がスイスの首都ベルンの公立中学に留学していたことをスクープ。帰国してからは再び外信部で朝鮮半島を担当している。