天国の国境を越える

命懸けで脱北者を追い続けた1700日

李 学俊著/澤田 克己訳
2013年4月26日 発売 在庫なし
定価 2,420円(税込)
ISBN:9784492212080 / サイズ:四六/上/320

私は、2007年3月から4年半余りにわたって脱北者を取材した。
韓国内はもちろん、ロシアやキルギスタン、ウズベキスタン、中国、ラオス、カンボジア、
タイ、日本、米国、英国、スイス、ベルギー、スペイン、オランダと十五カ国を歩いた。
インタビューに応じてくれた脱北者だけで300人になる。

彼らに会うことは、驚きの連続だった。
私は、中国と北朝鮮の国境地帯で人身売買をするブローカーにも会った。
麻薬を売る北朝鮮の軍人と値段交渉もした。
自由を求めて第三国へ密入国する脱北者に同行して何回も国境を越えた。
韓国大使館から追い出されて、別の国境に向かったこともある。
外界と隔絶された、シベリアのど真ん中にある北朝鮮の伐採事業所を訪ねていきもした。
エンジンが切れた密航船に乗って大海原を漂い、
中国と東南アジアの公安に捕まって監獄にぶち込まれそうになったこともある。
さらには、密林の中を強行軍で進んだ揚げ句、気力が尽きて死にかけたこともあった。

私は、脱北者たちを取材しながら考えただけで気が遠くなりそうな経験をした。
人身売買で売られた20歳ちょっとの北朝鮮女性は、
これで故郷の両親がひもじい思いをしなくてすむと力なく笑った。
ブローカーが彼女の対価として親に渡したのは、
100万ウォン(約9万円)にも満たなかった。
別の取材で会った中国の農村へ売られてきた女性は、
子供を産み、育てながら、一日中働いていた。
朝鮮半島のお盆にあたるチュソク(中秋)を前にしたある日、
彼女たちは故郷の母が恋しいと涙を流した。

脱北者が中国で産んだ子供は国籍を得ることができない。
彼らは「幽霊」と呼ばれた。
悲劇は次の世代にまで及んでいたのだ。
中国を脱出する中で生き別れとなる人々の姿も見てきた。
息子を手放さざるを得なくなって血の涙を流す母。
別れを告げられた息子は、母の前で号泣した。……

BBC、PBS、CANAL+、NHKなど、25カ国で放送され、世界中が涙したドキュメンタリー番組、待望の書籍化。

驚愕の事実に、涙なしでは読めない。

ローリー・ペック賞 ソニー・プロフェッショナル・インパクト最優秀賞
モンテカルロ・テレビ際 ドキュメンタリー部門最優秀賞

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概要

生きるために脱北する人たちを命懸けで追った5年間の記録。北朝鮮国境で起きている生々しい現実、脱北後も続く苦難が涙をさそう。

目次

プロローグ 意気地なしのジャーナリストの告白
第一章 国境に置いてきた悲しみの翼
第二章 荒れる海で守った妻との約束
第三章 韓国に行けないなら死ぬ
第四章 鴨緑江の闇を行き来する人々
第五章 三つの名前を持つ女
第六章 そこでは人間市場が開かれる
第七章 中国脱出一万キロ
第八章 難民になった脱北ブローカー
第九章 シベリアでも涙は熱い
第十章 大韓民国からの脱出
第十一章 自由と引き換えに家族を失う
第十二章 脱北者と生きる牧師たち
エピローグ 心の国境を越える道

著者プロフィール

李 学俊  【著】
い はくちゅん

朝鮮日報記者、ドキュメンタリー監督。1999年2月、朝鮮日報に社会部記者として入社。2001年10月に1カ月間アフガニスタンで従軍記者として取材した。2007年から約5年にわたって脱北者を取材した内容をもとに、ドキュメンタリー番組「天国の国境を越える」を製作。このドキュメンタリーはBBC(イギリス)、PBS(アメリカ)、Canal+(フランス)、NHK(日本)など全世界25カ国で放送され、イギリスで行われた国際フェスティバルで最優秀賞、グランプリを受賞した。

澤田 克己  【訳】
さわだ かつみ

毎日新聞外信部記者。学生時代の1989年に延世大学(ソウル)へ留学してから朝鮮半島とのつきあいが始まる。1991年毎日新聞入社。岡崎支局、東京本社編集制作総センター、政治部を経て、1997年からは外信部で朝鮮半島を担当、1999年から2004年までソウル支局に勤務。2005年からは朝鮮半島以外の世界も見てみようとジュネーブ支局に勤務するものの、2009年秋に東京へ帰る直前、金正恩副委員長がスイスの首都ベルンの公立中学に留学していたことをスクープ。現在は、ソウル特派員として朝鮮半島をウォッチしている。