帝国としての中国 【新版】

覇権の論理と現実

中西 輝政著
2013年7月26日 発売 在庫なし
定価 1,650円(税込)
ISBN:9784492212103 / サイズ:四六/並/360

安倍政権の安全保障ブレーンが説き明かす中国外交の本質。なぜ中国は膨張と分裂を繰り返してきたのか。日本を含めた新たな国際秩序を目指す中国外交と覇権の論理を、文明史的・地政学的視点から読み解く。

 かつて、「市場経済化で豊かになった中国は、いずれ民主化が進み独裁的な政治体制は徐々にではあれ清算されてゆくのではないか」、あるいは「経済大国として世界の有力なプレーヤーとなった中国は、国際社会の責任ある一員として、既存の国際秩序に自ら順応する国になってゆくだろう」といった中国の未来像が、日本のあちこちで語られていた。
 しかし、今、こうした中国の未来像に対し、「どうも、そうならないのではないか」、少なくとも「事はそう単純ではないようだ」「これは日本もうかうかしていられないのではないか」「では、一体どうすればいいのか」等々といった当惑や懐疑のムードに変わっている。こういう場合、よく欧米のジャーナリズムでは「チャイナ・オプティミズム」から「チャイナ・ペシミズム」への移行が始まったなどと評することがある。しかし、事はそう単純ではない。それは、単に、尖閣諸島をめぐる最近の日中衝突や習近平政権の誕生で中国の体制が逆に強権化し始めたこと、あるいは中国における環境問題や腐敗問題の実態がときが経つにつれ、いっそう悪化の兆しを見せていることなど、現象面に発する状況反応的な日本人の中国観の変遷と片づけられない、もっと深い次元の問題がかかわってくるように思われるのである。そこには、欧米諸国がまだ経験しておらず、韓国や東南アジア諸国ならついぞ経験することのない、日中間の深刻な「文明の衝突」といってもよい構造的な背景が横たわっているように思われるからである。(本書「新版へのまえがき」より抜粋)

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概要

新たな国際秩序を目指す中国の論理を、文明史的視点から読み解く。安倍政権の安全保障ブレーンが説き明かす中国外交の本質。

目次

第1章 中国とアングロ・サクソンとの対峙
第2章 「外に対する中」こそ「中国」の本質
第3章 中華秩序の膨張論理
第4章 「中華」と「周辺」との距離感覚
第5章 「アジア的粉飾」としての中華秩序
第6章 「アジア的本質」を映す中越関係
第7章 中越のアジア的平和の構造
第8章 極東のコックピット
第9章 北東アジアの「歴史的モザイク構造」
第10章 中朝「唇歯の関係」の本質
第11章 中華文明に対抗する「北方の壁」
第12章 中国は「西欧の衝撃」を超えられるか
第13章 現代中国が抱える「大いなる歴史の宿題」
第14章 21世紀の中国と世界、そして日本

著者プロフィール

中西 輝政  【著】
なかにし てるまさ

中西輝政(なかにし てるまさ )
l947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。この間、本書のテーマであるインテリジェンスを研究。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学大学院教授(総合人間学部教授を兼任)等を経て、現在、京都大学名誉教授。情報史研究会理事長。
石橋湛山賞(l990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(l997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(2001年、2005年)受賞。
主な著書に、『アメリカ外交の魂』(集英社)、『日本の「覚悟」』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『帝国としての中国』(東洋経済新報社)、インテリジェンスの20世紀』(編著、千倉書房)等がある。