東洋経済 ONLINE STORE

書籍

現代世界経済をとらえる Ver.4

現代世界経済をとらえる Ver.4

松村 文武編/関下 稔編/藤原 貞雄編/田中 素香編
ISBN:9784492442999
旧ISBN:4492442995
サイズ:A5判 並製 304頁 C3033
発行日:2003年02月28日 【在庫切れ】
定価
2,160円(税込)
定評あるテキストの改訂版。米国、EU、中国等の各国経済の現状から、世界貿易、国際投資、国際金融、国際収支、開発経済まで、初学者向きにやさしく解説する。

一覧新着情報

商品詳細

教科書の森(ダウンロード)

まえがき ―本書の利用ガイド―

  21世紀は2001年9月11日(火)の米国市民に対する同時多発テロをもって開始されたといってよいかもしれません。また、経済の世界化に対抗する反グローバリズムの運動も起こってきました。他方、アフガニスタンではイスラム原理主義の支配が崩壊しました。イラクは大量破壊兵器の無条件査察を受け入れざるを得ませんでした。アジアでは中国がWTOに加盟し世界経済のシステム的発展が前進しましたが、拉致事件や核開発の発覚した北朝鮮問題など不透明な部分もみられます。いずれにしても、人類にとって、20世紀がイデオロギーを相対化した世紀であるとすれば、21世紀は宗教を相対化するセンチュリーになる必要があるかもしれません。

 このような状況の中で本書の新訂第4版(Version4)を発刊することとなりました。このテキストは幸い初版(1987年)以来好評を得て、改訂を重ね、累積販売数は数万部に及んでおります。第4版もその実績と評価にお応えできるものにしようと工夫を加えました。もちろん、大学1~2年生に配置される世界経済論・国際経済学・外国経済論・各国経済事情や国際関係のゼミ等のための専門基礎レベルのテキストとして作成するという基本は変わりません。したがって、今回も編者が最も重視した点は、学部の学生に現代世界経済に関する基礎知識・基礎的事実・基礎理論をわかりやすくかつより正確に記述することです。

 本書のもう一つの特徴は、各版の出版時点で求めうる最良の研究者に執筆を依頼してきたことです。今回執筆をお願いした先生方も第一線で活発に研究活動をしておられる方々ばかりです。したがって、その利点を内容的に生かすようお願いいたしました。具体的には、各自の研究成果や見解をもわかりやすい形で各章において反映させてもらうということです。ただし、初学者のために、それらが通説と相違する場合にはそのことを識別できるようにも配慮していただきました。

 次に、各章の分量は90分授業2回分と想定し、通年4単位あるいはセメスター2期分のテキストとして対応できるよう、全14章に短縮しました(Ver.3は16章建て)。ただし全体のページ数は圧縮しておりません。また、各章にはコラム欄(HOT ISSUE)を設け、本文で触れることのできなかった重要事項あるいは未解決の問題を扱っています。読者の知的好奇心を刺激しようとしたものです。章末のFURTER STUDYはQuestionsとReferencesおよびe-referencesからなります。Questionsは講義の試験対策として便利ですし、Referencesとe-referencesはさらに体系的で詳細な勉強を目指す場合の参考となります。なお、Questionsの解答へのヒントについては、2003年4月までに東洋経済新報社のWEBSITE(www.toyokeizai.co.jp)に掲載する予定です。

さて、この第4版(Ver.4)」では新たな試みとして、「経済学検定試験(ERE)」(日本経済学教育協会)の受験要項における「国際経済分野」の出題範囲について最低限の対応をしておきました。そこでその項目と対応している章について以下に列挙しておきます。

  • 比較優位→第5章
  • 直接投資→第6章
  • 貿易政策→第7章
  • 外国為替市場→第9章および第10章
  • 国際収支→第8章
  • 国際資本移動→第6章と第9章
  • 累積債務問題→第11章

 またこのEREには国際経済事情や時事経済からの出題もあります。しかし本書は類書にくらべて現代の世界経済をより鋭くとらえており、それにとって最適な内容になっていることは、目次を見れば明白です。ただし以下の項目については、その執筆章を明示しておくことが便利と思います。

  • 「グローバリゼーション」→第4章
  • 「イスラーム経済」→第11章
  • 「9.11テロ」→第1章
  • 「アジア経済」→第2章
  • 「東欧ロシア経済」→第3章
  • 「国際労働力移動」→第4章

 以上が本書の構成と利用に際してのガイダンスです。なお、編者の編集分担を以下に記しておきますが、全体のコーディネートには今回も松村が当たりました。

  • 松村: 1章、5章、6章、8章
  • 関下:4章、13章、14章
  • 藤原:2章、7章、11章、12章
  • 田中:3章、9章、10章

 最後に、1987年の初版以来、長年にわたり本テキストの改善と普及にご尽力いただいた東洋経済新報社の皆さん、とりわけ黒野幸春、茅根恭子両氏に対し、この場をお借りして改めて謝意を表させていただきたいと存じます。

2003年2月
編者

執筆分担 (*は編者)

  • 第1章 中本 悟 (大阪市立大学経済研究所教授)
  • 第2章 座間 紘一 (桜美林大学経済学部教授)
  • 第3章 田中 素香* (東北大学大学院経済学研究科教授)
  • 第4章 夏目 啓二 (龍谷大学経営学部教授)
  • 第5章 石田 修 (九州大学大学院経済学研究院助教授)
  • 第6章 板木 雅彦 (立命館大学国際関係学部教授)
  • 第7章 藤原 貞雄* (山口大学経済学部教授)
  • 第8章 松村 文武* (大東文化大学経済学部教授)
  • 第9章 毛利 良一 (日本福祉大学経済学部教授)
  • 第10章 奥田 宏司 (立命館大学国際関係学部教授)
  • 第11章 絵所 秀紀 (法政大学経済学部教授)
  • 第12章 松井 範惇 (山口大学大学院東アジア研究科教授)
  • 第13章 千葉 典 (愛媛大学農学部助教授)
  • 第14章 関下 稔* (立命館大学国際関係学部教授)

各章のQuestionとAnswer

第1章のQuestionとAnswer

第1章:Question

  • 【1】
    「ドル危機」とは、どういうことなのか。また「ドル危機」はどのように展開してきたのか。
  • 【2】
    アメリカ資本主義は、「証券資本主義」、「株主資本主義」といわれることもあるが、どのような意味だろうか。
  • 【3】
    20世紀末の繁栄は「ニューエコノミー」と称された。いかなる意味で「ニュー」なのか

第1章:Answer

  • 【1】
    1947年に外国為替相場の安定を目的に成立したIMF協定のもとでは、アメリカは一定の比率で外国の通貨当局に対してそれらが保有するドルを金と交換することを保証していました。しかし1960年代になると西ヨーロッパや日本の経済復興およびアメリカの基礎収支の悪化によって、累増する各国保有ドルがアメリカの連邦準備銀行保有金を上回る事態になりました。これによる金=ドル交換不能、固定相場制の維持不能、これが最初のドル危機で、それは金=ドル交換停止と変動相場制への移行によって解決されました。ドル危機はいつも国際通貨体制の動揺と連動していますが、近年では途上国の債務危機など国際金融危機の規模が広がるにつれ、国際通貨体制の改革も途上国を巻き込んだものとなっています。これらについては、本書の第9章と第10章でさらに深めてください。
  • 【2】
    アメリカ企業の資金調達は、伝統的に証券(株式や社債)発行による調達が主流でした。また国債も含めて、個人の金融資産の運用先として証券市場が発展してきました。この点では企業の資金調達は銀行借入が主流、また個人の資産運用先も銀行預金が主流の日本とは好対照でした。このようなアメリカ資本主義を「証券資本主義」というわけです。「株主資本主義」とは、企業経営を取り巻くさまざまな利害関係者のなかで株主の利益を最優先する企業経営が行われる資本主義を指しています。株主の利益とはキャピタルゲインや配当ですが、これらの増大を最優先した経営は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)や経済全体にどのような影響を及ぼすかをさらに考えてみる必要があります。
  • 【3】
    本書10ページの表1-1に見られるような10年におよぶ経済成長の最大の特徴は、長期の経済拡大にもかかわらずインフレが抑制されたことにあり、ここに最大の「新しさ」があります。伝統的にアメリカ経済は、景気拡大に伴う賃上げや生産財価格の上昇がきっかけになってインフレが生じ、それを抑えるための政策が景気拡大を沈静化してきました。なぜ長期の経済成長にもかかわらずインフレが抑えられたのか。この問題を解こうとしたのがいくつかの「ニューエコノミー」論です。本書の他の章でも、IT革命やグローバリゼーションと「ニューエコノミー」について言及されています。これらも参照にしながら、さらに「ニューエコノミー」について検討しましょう。
第2章のQuestionとAnswer
  • 【1】
    毛沢東の「中国型社会主義」の特徴は何か。そしてそれはなぜ崩壊したか。
  • 【2】
    トウショウヘイの「社会主義初級段階」、「中国的特色を持つ社会主義市場経済」の特徴は何か。そしてそれはどのような歴史的可能性を持っているか。
  • 【3】
    中国のWTOへの加盟は、中国の国内経済および東アジア諸国間の経済関係にどのような影響を及ぼすだろうか。

第2章:Answer

  • 【1】
    この問題は2.1節、とりわけbにまとめて記述されています。当時の米ソを両極とする「冷戦」体制という国際的条件および中国の歴史的伝統や中国革命の特徴などの国内的条件、更に指導者としての毛沢東の思想の3つの側面から理解する必要があります。
  • 【2】
    2.2節は全体としてこの問題の解明にあてられています。aではその政策的内容の整理、bではその性格付けが、そしてcでその歴史的可能性が述べられています。ここでは現代中国の抱える歴史的課題の多重性とそれを段階的、漸進的に解決していく制度の模索形態として市場経済という考え方を受容し、新たな条件に適合的なものに作り替えていくという考え方が大切です。
  • 【3】
    この問題は2.3節、とりわけcにまとめて記述されています。中国の市場経済化と対外開放は多国籍企業との広範な結合関係を発展させ、東アジアとの貿易や投資の結合関係を発展させました。WTO加盟は中国の対外開放の完成形態であると共に国際的経済秩序の受容とそれへの適応です。社会主義市場経済は多国籍企業が主導するグローバルな経済秩序とどう切り結ぶか、巨大な「工場」、「市場」としての中国が東アジア諸国とのどのような経済を結ぶか、この問題がどう展開するかが今後の中国経済や東アジア諸国の将来にとって決定的に重要な意味をもつと思います。本章の著者はいくつかの可能性を示唆したに過ぎませんが、読者のみなさんも事態の推移を注視し、方向を探ってみてください。
第3章のQuestionとAnswer

第3章:Question

  • 【1】
    「ドル(相場変動)からの西欧の自立」はどのように達成されたのだろうか。
  • 【2】
    中・東欧諸国とEUとの欧州協定がEUの日米に対する国際競争力強化にどのように貢献しているかを検討してみよう。
  • 【3】
    1990年代後半以降の世界経済はアメリカを中心に回っていた。EUはそこにどのような貢献をしたのだろうか。「米欧枢軸」のゆくえはどのようなものだろうか。

第3章:Answer

  • 【1】
    IMF固定相場制が崩壊した1970年代以降、ドル相場の不安定な変動、とりわけドル相場の長期大幅の下落の時期に、ドイツ・マルクなどEC/EUの強い通貨の国に巨額の資本が流入し、相場が上昇するが、イタリア・リラのような弱い通貨の国には資本流入は起きにくいので、為替相場の分裂が生じ、そのためにEC/EU経済や経済政策は混乱に陥った。

    このため「ドルからの自立」が西欧諸国の悲願となり、ECは1972年域内固定相場制を開始した。EC域内で±2.25%の固定相場制をとり、各国中央銀行の介入によってそれを守ろうとしたのである。1973年世界的に変動相場制に移行したので、域内固定制、対外変動制の共同フロートに移行した。しかし1970年代には経済政策目標が食い違っていた。ドイツは物価安定至上主義、仏伊英などは経済成長重視だった。成長政策をとるとインフレとなり、ドイツ・マルクに対して固定相場制は維持不可能になる。英、伊、仏はそのため固定相場制からフランスなどが離脱し、変動制に移行し、域内固定制の試みは挫折した

    アメリカのドル相場放置に困惑したECは、1979年域内変動幅±2.25%の共同フロート制のEMS(欧州通貨制度)を創設し、フランスとイタリアが復帰した(イギリスは参加しなかった)。1980年代になると、ケインズ主義政策による景気回復がうまくいかなくなり、各国は市場依存の景気回復に移行し、ドイツと同じように物価安定を重視するようになった。とりわけフランスが物価安定政策に移行したEMS諸国の83年からマクロ経済政策が収斂するようになり、80年代末にはEU域内の為替相場が安定した。これがユーロへの通貨統合を進める基盤となった。89年スペイン、90年イギリス、92年ポルトガルがEMSに参加した。

    EMSは92年・93年に投機に見舞われ、92年9月にはイギリス、イタリアが離脱し、単独フロートに移った。93年8月為替変動幅を±15%に拡大して投機に対抗するのに成功した。この後1995年にEU加盟したオーストリア、フィンランドがEMSに参加し、96年にはイタリアが復帰して、実際には中心レートを中心に5%程度の変動幅を守りながら、ユーロへと進んでいった。

    30年間の固定相場制へのチャレンジと、それを成功に導いた80年代以降のEMS諸国のマクロ経済政策の接近が「ドルからの自立」を可能にした2大要因といえる。ユーロはドルからの自立を単一通貨の形で明確化したものであり、自立の最終形態ということができる。

    ただし2004年5月に中・東欧諸国など10カ国がEUに加盟する。域内の為替相場問題が再び起きてくるが、これらの国のマクロ経済安定を確保し、ユーロに参加させることで、為替相場問題を解消することができる。ユーロ以前とユーロ以後の違いといってよい。
  • 【2】
    EUと中・東欧諸国が1990年代前半に締結した欧州協定は、中・東欧諸国のEU加盟を準備するための協定であるが、その中核にFTA(自由貿易協定)がある。FTAでは域内の工業品関税を全廃する(農産物については多様な対応をしている)。中・東欧諸国が2002年初めに関税を全廃し、FTAは完成した(EUは1997年初めに撤廃。なお農産物はFTAに含まれなかった)。

    FTAによる関税の漸次的引き下げと中・東欧諸国の将来のEU加盟を見越して欧米日などから直接投資がそれらの国に行われ、多数の先進諸国企業が現地に進出していった。製造業では機械・自動車部門を中心に、また銀行などサービス部門でも先進国資本主導の市場経済化が進展した。社会主義時代に工業化が進んでいたので、優秀な労働者をドイツの10分の1程度の賃金で使うことができた。  中・東欧諸国の対EU輸出に占める製品単価は低く、水平貿易とはいえ、部品、完成品とも低級品へ特化している(「垂直的産業内貿易」)。90年代半ばには中間財貿易が50%以上を占め、EUから輸出された中間財をCEECで加工して品質を維持している。CEECの生産過程はEU側の生産過程に組み込まれ、EUの部品・製品製造基地の性格が強まっている。

    EU自動車産業の中・東欧貿易ではドイツが卓越した地位を占め、仏伊がそれに続いている。フォルクスワーゲン社はもっとも徹底して中欧を活用し、西欧でのシェアを引き上げ、最有力メーカーとなった。本社工場と中欧の工場とを鉄道で連結して安価で高品質の乗用車やSUVを大量生産している。1980年代から1990年代半ばまで日本車に押しまくられていた西欧大衆車メーカーの最近の復活に中欧の生産基地化が大きく貢献していると見てよい。

    この例に見られるように、日本にとってのASEAN、アメリカにとってのメキシコのように、EUコア諸国は中・東欧諸国を低廉な製造基地、部品生産基地として活用することができた。これが、国際競争力の復活の一つの鍵となっている。
  • 【3】
    IT革命によって90年代後半からアメリカの経済成長率は高まり、利潤率の上昇と楽観的な気分を反映して株価も大幅に上昇した。しかしアメリカ経済は拡大する経常収支赤字を抱えており、それをカバーするためには資本流入が必要であった。EUからアメリカに経常収支赤字をうわまわる巨額の資本が流入し(主として直接投資と株式投資)、アメリカの持続的な繁栄を支えた。他方、EUからのアメリカへの資本流出は、外国為替市場でのユーロ売り/ドル買いを意味するので、為替相場はユーロ安・ドル高となった。99年初めには1ユーロ=1.17ドルであったが、2000年10月には1ユーロ=83セントに約30%も下落した。ドル高はアメリカの輸入物価上昇を抑制し、アメリカのインフレ抑制の一因となり、アメリカの繁栄を支える一要因となった。他方ユーロ安はユーロ域の輸出を助長し、景気回復・経済成長率の高まりに貢献した。ここにアメリカとEUとの相互利益強化のメカニズム、つまり本章にいう「米欧枢軸」が形成されていたということができる。

    2000年末からアメリカの景気後退が顕在化し、「米欧枢軸」にも転機が訪れた。IT部門で生じたバブル崩壊による巨大な過剰設備から来る本格的なアメリカの不況と株価暴落はEU経済を直撃し、2001年から現在までEU経済も深刻な不況に見舞われている。EUからアメリカへの資本流出は激減し(とりわけ直接投資の減少)、アメリカは経常収支赤字をカバーすることができず、ドルはユーロに対して2002年春から下落を始めた。秋にアメリカのイラク武力攻撃による世界経済の緊張が生じると、ドルはさらに下落して11月には1ユーロ=1ドルが定着し、その後アメリカのイラク武力攻撃による世界経済の不安定を嫌気した市場のドル不信によって、2003年2月5日には1ユーロ=1.09ドルとなった。

    政治面でもアメリカの武力攻撃に反対するドイツ、フランス、ベルギーとアメリカに追随するイギリス、イタリア、スペインの対立が厳しくなっている。

    独仏と米英などとの対立の根底には、独仏戦争を防ぎ不戦共同体を創ることからスタートしたEUと、世界最強の軍事力をアメリカ資本の利益のために利用し戦争も辞さないとするアメリカとの間の理念の対立が横たわっている。

    戦争でテロを防ぐことはできない。世界の貧困国に対してその経済成長を支援することで貧困の悪循環を防ぐ措置を世界規模でとらない限り、テロリストは無数に生産されてくる。21世紀の世界経済の理念が問われている。

    「米欧枢軸」は、アメリカ経済が復活し、かつてのようにEUからの資本流出を促すようになれば、復活するかもしれないが、もともと底が見えないIT不況に戦争による市場の動揺が重なって、アメリカ経済の復活の展望はまだ見えていない。むしろ経常収支赤字は海外軍事支出で膨れあがるおそれがある。すでに2003年財政年度(02年10月から03年9月)に3000億ドルの財政赤字が見込まれており、このままいくと、1980年代にドルの長期大幅の下落をもたらした財政と経常収支の「双子の赤字」が再現することになろう。

    本章46ページに記したように、ユーロがドルに代わって世界の基軸通貨になる展望は短期的にはほとんど無いと思われるが、それでもユーロは世界第2の通貨である。アメリカ経済が不安定化すれば、ドルを売ってユーロを買う動きが世界規模で生じている。世界の金外貨準備(02年9月末で総額2兆4千億ドル)に占めるユーロのシェアは2001年末で13%、68%のドルと大きな格差があったが、03年末にはユーロのシェアは30%になるとの予想もある。EU経済の不況も深刻だが、アメリカ経済復活による「米欧枢軸」復活の展望は当分もてないということになる。
第4章のQuestionとAnswer

第4章:Question

  • 【1】
    IT革命とはなにか。IT革命がアメリカ経済をどのように変えたのか考えてみよう。
  • 【2】
    IT産業の構造的特質と企業の競争構造の変化がITのグローバル生産にどのような影響をもたらしたのか考えてみよう。
  • 【3】
    多国籍IT企業とアジアの専業企業のそれぞれの競争優位はどのようなものか。それぞれ関連させて考えてみよう。

第4章:Answer

  • 【1】
    IT革命とはなにか、を考える場合、まず第1に、IT=情報技術の革新が、技術的に見てどのようなものであるか、ということを考えます。その次に、その技術上の革新が、経済や産業、社会や生活にどのような影響をもたらしているのかを考えることが大事です。IT革命は、たんなる技術上の革新だけではなく、経済や産業、社会や生活のありかたを大きく変えるものだからです。IT投資が生産性を上げるという事例を考えましょう。IT投資とは、企業が企業活動のためにITを導入することです。どういう結果を生むでしょう。たとえば、企業が取引先企業との間の資材や部品調達と管理にインターネットを活用するサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)は、企業に滞留する資材や部品の在庫を劇的に削減することに貢献します。しかし同時に、SCMは、予期しない事故や事件による物流の混乱によって工場の生産ラインが止まるなど打撃をうける危険も伴います。
  • 【2】
    まず、IT産業の構造的な特質と企業の競争構造を考えましょう。コンピュータ産業の時代は、コンピュータ・メーカーのアーキテクチャ(基本設計思想)にもとずいてコンピュータが開発・製造・レンタルされていました。このためコンピュータ・メーカーは、技術開発力、販売力、資本力を必要とする資本集約的な産業構造でした。これに対してIT産業では、PCやWSのアーキテクチャは、公開されているので専業化した企業が、PCやWSのハードウェア、ソフトウェアの基幹技術や基幹部品、周辺機器などを開発もしくは製造、あるいは組立や販売だけに特化することが可能になりました。このためコンピュータ産業と比較して相対的に技術開発力、販売力、資本力など総合力のない専業企業がIT産業に参入することが可能になりました。こうしたIT産業の相対的に低い参入障壁が、台湾やインドなどアジアの専業企業をしてITの生産と組立を可能にしたのです。
  • 【3】
    日米の多国籍IT企業は、コンピュータ(PC、WSを含む)のハード、ソフトの開発、製造、販売、保守、サービスの活動を企業に内部化しており、しかもこれらの企業活動を国境を超えて展開しています。これらの多国籍IT企業 の競争優位は、企業内国際分業の強みを生かすことにあります。これに対して、インテル、マイクロソフト、デル、サンマイクロシステムズ、シスコシステムズのようにPC、WSのハード、ソフトの開発やマーケティング、組立に専業化したネットワーク企業もまた、技術開発力、マーケティング力に技術的な優位を維持する競争戦略をとっています。

    アジアの専業企業は、これらのネットワーク企業と緊密な協力関係、補完関係を維持しながらPC、WSのハード、ソフトの部品製造や組立、設計などを受託製造(OEM)します。設計まで含めた受託製造をODMといいます。アジアの専業企業の競争優位は、労働集約的工程や部品・製品の製造・組立を中心にした相対的に低い賃金と高い技術力です。
第5章のQuestionとAnswer

第5章:Question

  • 【1】
    リカードの比較優位論を説明しなさい。
  • 【2】
    リカード・モデルとH-Oモデルの違いを述べなさい。
  • 【3】
    本文の(5.5)式を利用して、投資I(内需)が変化したときの貿易収支(X-M)に与える影響を説明しなさい。

第5章:Answer

  • 【1】
    自国と外国がA商品とB商品を生産し、表1のように商品1単位あたりの必要労働が与えられているとしよう。

表1

  自国 外国
A商品 10 60
B商品 10 20
  • (1)
    比較優位を説明してみよう。
    国内の交換比率は労働の投入量に基づいているので、本文の表5-5と同様の手続きをとると、表1は表2のようになる。表2から分かるように、A商品1単位の生産に必要な労働はB商品に比べてどちらの国の費用が相対的に少ないかといえば、交換比率から、自国の方が少ない。逆にB商品1単位の生産に必要な労働は、外国の方が相対的に少ない。そのため、相対的に費用の少ない商品にそれぞれの国は比較優位をもつ。

表2

  自国 外国
A商品1単位と交換されるB商品 1(=10/10) 1/3(=20/60)
B商品1単位と交換されるA商品 1(=10/10) 3(=60/20)
  • (2)
    交易条件(A商品とB商品の交換比率)が2である場合、比較優位をもつ商品生産に特化して貿易することが両国に利益であることを示してみよう。
    表3では、自国のA商品は国内で生産される労働費用であるが、B商品は外国からA商品1単位と交換にB商品2単位輸入することができるために、B商品の輸入費用は自国のA商品に投下された労働の半分の5単位で入手できることを意味する。また、外国は、B商品を国内で生産し、B商品2単位と交換にA商品1単位を輸入するので、B商品の労働費用の2倍の労働でA商品を入手できることを示している。表1と比べると、貿易により、自国はB商品1単位を国内で生産するよりも5労働節約し、外国はA商品を20労働節約して入手できることになる。

表3

  自国 外国
A商品1単位の必要労働量 10 40**
B商品1単位の必要労働量 5* 20

*外国からからB商品1単位を輸入するのに必要な自国の労働費用。
**自国からA商品1単位を輸入するのに必要な外国の労働費用。

次に、簡単なモデルで貿易の特化の利益についてみるために、貿易前の生産量を表4のように考えてみよう。

表4(貿易前の生産量)

  自国 外国 世界全体
A商品 1 1 2
B商品 1 1 2
  • 自国は比較優位にあるA商品に生産特化し、外国は比較優位にあるB商品に特化したと考えると、自国はB商品の1単位分の労働量10をA商品に配分し、外国はA商品1単位の生産に必要な労働60をB商品の生産に割り当てるので、

表5(比較優位に特化した場合の生産量)

  自国 外国 世界全体
A商品 2 0 2
B商品 0 4 4
  • となり、世界全体で消費可能な商品の生産量が拡大することが理解できる。
    逆に、両国が比較劣位にある商品の生産に特化するならば

表6(比較劣位に特化した場合の生産量)

  自国 外国 世界全体
A商品 0 1.3 1.3
B商品 2 0 2
  • 表6のようになり、表4と比べると世界全体の生産量は減少し、消費可能な商品量も縮小する。
  • (3)
    両国とも貿易の利益を得ることができる交易条件(t)の幅をもとめてみよう。
    10/10
    つまり
    1
    である。
  • (4)
    以上のことを、より一般的な形で示すと以下のようにまとめられる。

表7

  自国 外国
A商品 La La*
B商品 Lb Lb*

*は外国を意味する

  • 表4で次のような関係が成立しているとするならば、
    La/Lb < La*/Lb*
    自国はA商品に、外国はB商品に比較優位を持つ。そして、この場合、貿易が成立するためには交易条件(t)は
    La/Lb L
    a*/Lb*
    となる
  • 【2】
    H-Oモデルについて詳しくみてみよう。

    (1)
    リカード・モデルとH-Oモデルの違いを簡潔に述べてみよう。
    リカード・モデルとH-Oモデルは比較優位を説明するモデルであるが、形式的にはモデルを構成する生産要素の数が異なるとともに、本質的には比較優位の原因が異なると言える。
    まず、基本的モデルの型が異なることを確認しよう。リカード・モデルは、形式的には生産要素は労働というただ1つの要素か構成される2国2財1要素モデルである。それに対して、H-Oモデルでは、生産要素は労働と資本というように複数の生産要素から構成される2国2財2要素モデルである*。
    次に、比較優位の原因が異なるという本質的な相違を確認しよう。リカード・モデルでの比較優位は2国間の技術格差が存在していること(換言すれば、2財の労働投入比率が2国間で異なること)が原因で発生する。それに対して、H-Oモデルでは、2国間の技術力格差は同じ(換言すれば資本・労働比率が同じ)であり、労働と資本の賦存比率が異なることが比較優位の原因である。
  • *生産部門と生産要素数が同じ(2部門2要素)場合のH-Oモデルを基準にすると、リカード・モデルは部門の数が要素の数より大きいと言える。そして、要素の数が部門より大きなモデルとして「特殊要素モデル」と呼ばれるものがある。比較優位の貿易論は、従って、リカード・モデル、H-Oモデル、そして「特殊要素モデル」という3つのモデルが存在する。本文では、「特殊要素モデル」は説明されていないが、国際貿易論の詳しいテキストには必ず載っているので、興味ある学生諸君は進んで学習してほしいものです。
  • (2)
    H-Oモデルの理解を深めるために、K、Lが自国の資本と労働の賦存量、K *、L*が外国の資本と労働の賦存量とし、K /L>K */L*が成立しているとき、貿易前の自国の相対要素価格ω=w/rと外国の相対要素価格ω*=w */r*の関係は、必ずω>ω*となるかどうかを説明してみよう。
    このような設問を付け加えた理由は、H-Oモデルの比較優位の原因を明確にするため自国と外国の需要条件が同じ(ホモセティックで同一の選好)であるという仮定が必要となることを注意したかったためである。
    つまり、自国は資本豊富国であり、外国が労働豊富国であるので、自国と外国の消費者の選好が同一ならば、工業製品と農産物の相対価格PとP *はω>ω*を反映して、P

    K*/L*であっても、ω<ω*となるであろう。

  • 【3】
    本文の(5.5)式を利用して、投資 I(内需)が変化したときの貿易収支(X-M )に与える影響を説明しなさい。(問3の問題文を訂正します。貿易収支(X-M 0)となっていましたが、(X-M )の間違いです。)
    本文の(5.5)式を利用して、投資 I(内需)が変化したときの貿易収支(X-M )に与える影響を説明しなさい。(問3の問題文を訂正します。貿易収支(X-M 0)となっていましたが、(X-M )の間違いです。)
    してGNP(Y )の変化と貿易収支(X-M )の関係をみてみよう。
  • Y =(C 0+I +X -M 0)/(1-c+m)
    内需の変化としてΔI を考えよう。(5.5)より、投資がΔI だけ変化すれば、GNP(Y )の変化ΔY は
    ΔY =ΔI /(1-c+m)  (1)
    となる。所得が変化したので、(5.3)の輸入関数から
    ΔM =mΔY =mΔI /(1-c+m)  (2)
    従って、貿易収支(X -M )の変化は、輸出は変化していないので(ΔX =0)
    ΔX -ΔM =-mΔI /(1-c+m)  (3)
    つまり、投資(内需)が増加するとGNPは(1)より増加するが、GNPの増加は(2)より輸入を拡大させ、その結果(3)より、貿易収支は減少する。換言すれば、内需拡大政策は、GNPを拡大させるとともに、貿易収支を減少させる効果があるという政策的含意を持つ。
    それでは、輸出(外需)が拡大した場合をみてみよう。輸出がΔX だけ変化すれば(5.5)式より、
    ΔY =ΔX /(1-c+m)  (4)
    となる。所得が変化したので、輸入も以下のように拡大する。
    ΔM =mΔY =mΔX /(1-c+m)  (5)
    従って、貿易収支の変化は
    ΔX -ΔM =ΔX -mΔX /(1-c+m)
    =(1-c )ΔX /(1-c+m)  (6)

    となる。 つまり、輸出(外需)が拡大すると、(4)よりGNPも増加し、さらに(6)より貿易収支も増加する。
第6章のQuestionとAnswer

第6章:Question

  • 【1】
    Fortune(邦訳版『フォーチュン』)毎年7月号に掲載されている世界企業ランキングと、IMF, International Financial Statistics Yearbook などに掲載されている各国GDP(国内総生産)を一覧表にして、世界の代表的な多国籍企業と国家の生産額を比較してみよう。
  • 【2】
    1979年に中国が対外開放政策に転換して以来、日本から大量の直接投資が中国に流出している。自動車、電機、繊維など、関心のある産業を取り上げて、この理由を理論的に考察してみよう。
  • 【3】
    発展途上国の貧困問題や開発問題に対して、国際的合併買収はどのようなメリット、デメリットをもたらすだろうか。とくに、民営化や市場経済への移行とかかわらせて考察してみよう。

第6章:Answer

  • 【1】
    多国籍企業が今日急速にその規模を拡大しつつあることは、周知の事実です。たとえば、1990年から2000年にかけて世界の500大企業は、販売額を3倍に拡大しています。これに対して、国々のGDP(国内総生産)は、同時期にほぼ1.5倍に拡大しています。したがって、世界経済に占める多国籍企業の比率は確実に上昇しているということができます。しかし、この「比率」を正確に計測することは、それほど容易なことではありません。設問にある『フォーチュン』誌では、伝統的に多国籍企業の売上高をとっていますが、売上高は中間原材料費を含んでいるので、本来的には国のGDPと比較することができません。しかし、参考文献の6番目に挙げたWorld Investment Report、2002年版90ページでは、はじめてこれを付加価値ベースで比較する試みを行っています。このデータは、e-referenceであげたURLで利用できますので、一度『フォーチュン』のデータと比較してみましょう。
  • 【2】
    近年、世界の直接投資流入額の1、2位を争う中国の動向を占うためにも、ダニングの折衷理論はわかりやすい手がかりを提供してくれています。これまで日本の賃金水準の20分の1程度といわれてきた低賃金指向型の投資が圧倒的多数を占めてきましたが、最近ではむしろ、爆発的に拡大する国内市場を目指した投資が急激に拡大しています。自動車産業はその典型ということができるでしょう。優れた自動車生産技術とマーケティング手法をもつアメリカ、日本、ドイツなど、世界の名だたる主要自動車メーカーはほとんど中国進出を果たしています。これに対して電機産業の対中国進出は、南の広東省周辺地域に展開する産業クラスターの集積利益――関連産業が限定された地域に集積することによって生ずる生産性アップ、取引コスト削減の経済性――を目指すものです。しかし、いまだに繊維産業の対中国進出は現地の低賃金を利用することを目的とするものであり、近年、やや停滞傾向にあります。
  • 【3】
    発展途上国では、いまだに株式や債券を取り扱う資本市場が十分に発達していませんから、合併買収を通ずる直接投資のかなりの部分は、国営・国有企業の民営化がらみの投資が占めることになります。しかもこの民営化は、通貨危機、経済危機の後に政府債務を削減する目的で取り組まれることが多いのです。たとえば、1994年のメキシコ通貨危機、1997-8年のアジア通貨・経済危機後の韓国、タイ、インドネシアが典型的です。たしかに、多国籍企業の進出によって、優れた経営手法や市場経済の活性化がもたらされることは一概に否定することができませんが、グリーンフィールド投資と違って新たな生産設備がこれによって途上国にもたらされるわけではないことに注意する必要があるでしょう。要は、多国籍企業の進出を発展途上国独自の経済発展戦略の起爆剤としてどのように活用するかが問われているわけです。
第7章のQuestionとAnswer

第7章:Question

  • 【1】
    セーフガードの対抗措置としてはどのような措置が考えられるか。(措置の限度についても調べてみよう。)
  • 【2】
    アンチダンピング税発動に必要な十分な証拠とはどんなものか。
  • 【3】
    レッド補助金やイエロー補助金、グリーン補助金にはどんなものがあるか。
  • 【4】
    TRIMsにはどのようなものがあるか。
  • 【5】
    自由貿易協定や地域統合とWTOの最恵国待遇原則の関係を考えてみよう。
  • 【6】
    WTOの「国連化」は、どのような影響を世界の通商にもたらすか。

第7章:Answer

  • 【1】
    (1)セーフガード措置は、もともと自由で公正な貿易が行われていることを前提に、輸入国が、輸入品の急増によって自国産業に重大な損害が発生する(おそれがある)場合に一時的、緊急的に輸入を制限する措置です。それは自由貿易を維持するために不可欠な措置です。こうした措置をとる権利が認められなければ、どの国も自由貿易原則を受け入れないでしょう。しかし、輸入国のセーフガード措置によって、輸出国も輸出が減少するために自国産業に損害が発生することも避けられません。それでは、平等原則に反することになるので、輸出国にセーフガード措置をとる国からの輸入制限を認め、均衡を維持するための措置が対抗措置です。WTOの「セーフガード協定」では、安易にセーフガード措置がとられないように、さまざまの工夫がされています。対抗措置もその一つと考えられます。

    (2)いま、A国のX産業がB国(特定の国ではなく、輸出国全体をさします)からの輸入品急増によって重大な損害をうけている十分な証拠が得られ、措置が必要と判断されたためセーフガード措置(セーフガード措置には暫定措置と通常措置がありますが、ここでは通常措置のケース)を発動しようとします。このために、A国はB国と協議を開始します。その際にx商品の関税を引き上げたりあるいは数量制限する代わりに、y商品の関税を引き下げたり、(数量制限している場合には)数量制限を緩和したりなどの補償を申し出します。これはセーフガード措置をとる国の義務に近いものです(協定では、補償するように努力することがもとめられています)。

    (3)しかし、協議は補償について決着しないまま、A国はセーフガード措置を発動しました。B国はこれに対して、セーフガード措置が発動されて90日以内にWTO(具体的には、物品の貿易に関する理事会)に、具体的な対抗措置の内容を記した通報を行い、WTOが通報を受け取った後30日が経てば、WTOが認めた対抗措置(実際にはB国が通報した措置)をとることができます。

    (4)B国の対抗措置は、セーフガード措置によって失うものと等価値の義務を措置国に対して停止し、等価値を維持する範囲に限られます。たとえば、A国のセーフガード措置によってB国のX産業が1億ドルの損害を受ける(輸出減)と計算されれば、B国はA国から輸入しているz商品に認めていた関税(譲許関税率といいます)を引き上げたり、輸入数量制限をするとしても、それは輸入減少が1億ドルを超える規模のものであってはならないことを意味しています。

    (5)ではどんな場合でも対抗措置がとれるかといえば、そうではありません。先の例では、x商品の絶対的輸入量が増えて、A国のX産業が重大な損害が増えた結果セーフガード措置が発動された場合、B国は最初の3年間は対抗措置はとれません。つまり、絶対的輸入量の増加が理由でありかつ手続きが厳密にとられていれば、対抗措置をおそれることなく、セーフガード措置が発動できるわけです。x商品の相対的輸入増加(つまり国内生産量の減少による輸入品シェア増大)を理由としたセーフガード措置への対抗措置発動については、こうした制限はありません。
  • 【2】
    (1)アンチダンピング税(ダンピング防止税)を発動するための十分な証拠には2段階があると考えられます。第一の段階は、輸入国の産業が相手国のダンピングによって実質的な損害を受けている(あるいはおそれがある)と判断して、アンチダンピング関係当局(国によって異なる。日本であれば経済産業省)に調査を申請するときの証拠です。次の段階は、当局がその証拠によって、調査開始を決定して、実際にアンチダンピング税を発動するに至る段階での十分な証拠です。もちろん第2段階の証拠の方が一層詳細で体系的であることはいうまでもありませんが、第一段階の証拠があやふやであれば、当局は申請を却下しなければ、申立相手国関係者から非難を受けるし、DSBで係争になったとき勝つことができませんから、第一段階の証拠も厳格でなければなりません。

    (2)調査申請をするにはダンピングの事実、損害の事実、両者の因果関係を示す証拠がなければなりません。これには、少なくとも国内生産の量、価額、ダンピング輸入産品に関する完全な記述、輸入者名、外国の生産者名、産品の輸出国内価格、輸出価格、輸入数量、輸入国の国内価格への影響、国内産業への影響に関する情報等が含まれます。

    (3)申請する場合の重要なポイントは、実質的な損害が個々の企業や産業の一部ではなく産業に生じている(生じるおそれがある)ことです。つまり、当局は、その申請を支持している国内生産者の生産高の合計が支持あるいは反対を表明した生産者の生産高の合計の50%を超えた場合に限り、申請が国内産業によってまたは国内産業のために行われたと見なし、調査開始を決定できるとしています。ただし、その場合でも申請を明示的に支持している国内生産者の生産が国内産業によって生産される同種の産品の総生産の25%未満である場合(賛成反対を表明した生産者の生産が相対的に少ないような場合が考えられます)は調査を開始できないとしています。申請は、国内生産者の被用者またはその代表者(例えば労働組合)もできますし、支持表明ができます。また国内生産者が申請しなくとも関係当局が自ら調査を開始することもできます。

    (4)調査申請のための証拠は、関係者が入手しうる範囲内での証拠でよいのですが、当局が調査を開始して収集する証拠はそうではありません。当局は利害関係者に必要とする情報について通知し、関連する証拠の提出を求めることができます。ダンピングを訴えられた側には質問書が届けられ、30日以内(質問書発送日から1週間と30日以内)に回答しなければなりません。製造原価や販売方針という企業にとってきわめて重要で秘匿を必要とする情報は、当事者の明示的な同意なくして開示されることはありませんが、漏洩の危険が全くないわけでもありません。また当局は、関係企業の同意を得、かつその国政府が反対しないことを条件として、他の加盟国で情報の収集確認のために現地調査できますし、情報提供に協力しない場合は知ることの出来た事実によってのみ決定することもできるといった強い権限を持っています。こうして当局はダンピングの事実、実質的な損害の事実、両者の因果関係に関する事実の証拠を集めていきますので、これに対抗してダンピングを訴えられた側がダンピングに事実はない、あるいは実質的な損害はない、両者の因果関係はないなどの挙証をしていこうとすれば膨大な費用を必要とします。

    (5)こうした当局の調査手続きや証拠の取り扱いについては詳細な規定がWTOのアンチダンピング協定(正確には「1994年の関税及び貿易に関する一般協定第6条の実施に関する協定」)に設けられています。
  • 【3】
    (1)WTOが設立されるまでは、GATTにおいて、輸出補助金とは、直接又は間接に輸出を増加させ、輸入を減少させる補助金と規定され、交付しているときは、ガットに通報し、補助金が他の国に著しい害を与えている場合は、要求があれば、ガットまたは関係国と協議しなければならないとされてきました。また農産物など1次産品に対する補助金は、禁止されないが、自国のシェアを不当に高めるような補助金を交付してはならないとされてきました。輸出補助金については、東京ラウンド終結時(1979年)に「ガット第6条、第16条及び第23条の解釈及び適用に関する協定」が締結されましたが、発展途上国はその内容を不満として、参加していませんでした。WTOの「補助金および相殺措置に関する協定」は、旧協定を基礎に、より具体化し詳細な規定(交通信号方式ともいわれます)を備えかつWTO加盟国が全て参加することを義務化したものです。

    (2)協定によれば、補助金とは「政府又は公的機関による資金面の貢献(財政負担)があり、かつそれによって利益がもたらされる場合」が全て当てはまります。補助金の形態には(a)贈与、貸付、出資、債務保証、(b)税額控除等による財政による奨励、(c)政府による物品もしくは役務の供給または物品の購入、(d)以上を委託又は指示により民間に行わせる場合などがあります。レッド(禁止される補助金)・イエロー(相殺措置の対象となる補助金)、グリーン(相殺措置の対象とならない補助金)の区別に形態は関係ありません。

    (3)レッド補助金は、農業に関する協定で定められた補助金を除いて、輸出に基づいて交付される補助金及び輸入品より国産品を優先使用する条件で交付される補助金は全て禁止です。たとえば次のような補助金です。

    輸出実績に基づいた直接補助金、
    輸出に対する報奨措置(外貨資金特別割当等)
    輸出貨物の運賃を国内向け貨物よりやすくすること、
    同じく、原材料、サービスをやすくすること
    輸出に関連して直接税、社会保障負担金を減免、繰り延べすること
    同じく、特別控除を認めること
    同じく、間接税を減免、繰り延べすること
    輸入原材料関税額を超えた戻し税
    輸出保険制度の非合理的に廉価な料率
    政府による非合理的に廉価な輸出信用の供与、代替
    その他公的勘定に対する負担でガット16条の輸出補助金に該当するもの

    (4)イエロー補助金は、農業に関する協定で定められた補助金を除いて、その補助金の対象が特定の企業あるいは産業に明示的に限定されている補助金(特定性のある補助金)で、他国に「著しい害」を与える(与えるおそれがある)場合等に、その供与を停止する等の措置をとる義務が生じる補助金です。イエロー補助金に関して「著しい害」があると推定される場合は、輸入国は相殺関税を課すことができます。これに不服の場合は、害がないことを補助金交付国が証明する義務があります(挙証責任転換の原則)。著しい害ありと推定されるケースとしては次のものがあります。

    (5)グリーン補助金は、特定性のない一般的に利用可能な補助金がこれに該当します。また特定性のある補助金であっても、その一部についてはグリーンであると認められています。たとえば、
    研究開発補助金については
    *産業上の研究については研究費の75%まではグリーン。
    *競争前段階の開発活動については研究費の50%まではグリーン。
    *補助金が企業の債務を直接に免除する場合。

    地域開発補助金
    *当該地域の失業率が全国平均より10%高いまたは所得が15%低ければ全額がグリーン。
    *競争前段階の開発活動については研究費の50%まではグリーン。
    *補助金が企業の債務を直接に免除する場合。

    環境保全補助金
    *既存設備等を法令により新しい環境保全基準に適合させるために、企業に重大な制約ないし負担を負わせる場合で、かつ次の条件も満たす場合はグリーン。
    ◇1回限りで、費用の20%を限度
    ◇補助金が施設等の更新または操業費用を負担するものでないこと
    ◇企業の製造過程におけるコストダウンをまかなうものでないこと
  • 【4】
    (1)今日では発展途上国は、自国産業の発展のために外国企業を積極的に受け入れるようになっている(対内外国直接投資の受け入れ)。その目的のために外国企業にさまざまな条件を課すことが多い。たとえば、ローカル・コンテント(local content:現地の材料や部品の使用)を要求することで現地の関連産業の発展を図ったり、製品の輸出義務を課すことで、国際収支の安定や外貨獲得によって輸入資材の確保を計ったりすることなどである。しかし、こうした現地政府の措置は、他方で外国企業の自由な経営活動や計画を制約するだけでなく、現地企業や競争企業との間に差別を引き起こしたり、現地政府との間に軋轢や汚職すら招きかねない。こうしたことから投資側は措置に反対し、受入国側は措置に係わる政策の自由確保の立場から政策規制に反対してきた。

    (3)開発途上国は、禁止された措置については、1999年12月までに撤廃することとし、さらに継続を必要とすることも、WTOに通報することによってに例外的に可能となっています。このために現在でもアルゼンチン、チリ、コロンビア、メキシコ、マレーシア、パキスタン、フィリピンなどが、ローカルコンテントを中心にTRIMsを実施しています。
  • 【5】
    (1)WTOは、基本協定であるGATTで最恵国待遇原則を掲げています。最恵国待遇原則は、WTO加盟国相互間では、加盟国が提供した最も有利な待遇を無差別に他の加盟国にも提供し合うことを約束するものです。したがって、関税同盟あるいは自由貿易協定や地域統合のように、それに調印したりあるいは加盟した国相互間だけで有利な待遇を与え合うことは、最恵国待遇原則に反していることは明らかです。にもかかわらず、こうした関税同盟などを認めているのは、アメリカが第2次大戦後すぐにガットを発足させようとした時には、すでにヨーロッパには戦前からの植民地との間の関税同盟が存在しており、それを認めなければ、ガット発足が難しく、米欧が妥協せざるを得なかったという歴史的な経緯があります。したがってGATT24条は、関税同盟等に加盟していない他のガット締約国に対して貿易障害にならないこと、同盟国域内等において全ての貿易障害が撤廃されている(つまり自由貿易が実現している)ことなどの条件を満たしていれば、ガットに通報すれば関税同盟等を設立あるいは参加することできることにしていましたし、現在でも変わりありません。

    (2)したがって、自由貿易協定や関税同盟などは、本来は最恵国待遇の例外措置と考えられますが、ヨーロッパでEU、アジアではASEANが大きく育ち、アメリカがNAFTA(北米自由貿易協定、1994年1月発効)を結成するにいたって、それらを、例外措置ではなく、WTOを補完し自由貿易を着実に促進する制度と捉える主張が強くなっています。WTO全体がラウンド協議を通じて一斉に自由貿易に向かう難しさはガットの歴史が示しており、長期に及ぶラウンド協議はWTOの実効性を疑わせるおそれもあります。また最恵国待遇原則を開発途上国に強制することは無理があるので、結局、例外的取り扱いの配慮が必要になります。こうしたことから、同一地域内で実情にそった貿易協定を結ぼうとする動きが出てくるのは自然と思われます。

    (3)他方、こうした制度がガット/WTOが追求してきたグローバリズムに反省を迫るリージョナリズムの流れを示すものだとする主張もあります。しかし、WTOのもとで結ばれる自由貿易協定や関税同盟がWTOを無力化するとは思われません。なぜならEUのように完成度の高い関税同盟ですら、域外との貿易の高い成長を必要としているからです。またNAFTA地域でも域外からの輸入なくしては域内貿易が成立しないからです。最終的にはリージョナリズムはWTOによって支えられているといってよいでしょう。しかし、WTOの機能が弱体化するようなことがおこれば、話は違ってくるでしょう。

    (4)WTOでは、関税同盟、自由貿易地域(協定)、それらの中間段階の協定をまとめて地域貿易協定(Regional Trade Agreement,RTA)と分類し、これに地域協力形態(アジア太平洋経済協力、APEC等)を加えたものを地域統合と総称しています。WTOに通報されている自由貿易協定(2国間を含む)と関税同盟は2000年6月現在で113あります。こうした地域貿易協定については、参加国はGATT24条の条件を満たしており適格と主張していますが、他方それ以外のWTO加盟国は、条件を満たしていないと主張が分かれている例が多いように、地域貿易協定は調印国と非調印国では利害が反しているのが実情です。従来、ガット/WTOを最優先して、こうした協定に参加してこなかった日本や韓国でも最近では自由貿易協定を積極的に結ぼうとする方向に向かっています。
  • 【6】
    (1)WTOの「国連化」とは、いくつかの意味があると考えられます。第1は、なんといっても第2次世界大戦後の世界の平和や安全保障は、国連という国際機関の定めたルールに依拠してきた点が大きいと同じように、世界の通商がWTOの定めたルールに依拠するようになったという点です。第2は、そのルールが実効性を持つためには、世界の国の全てが参加する必要があり、それは国連では資本主義国と対立していた社会主義国も加盟することによって果たされたと同じように、WTOでは2001年に中国が参加し、今後ロシア等の参加が予定されており、文字通り国連と同様な構成になるという点です。第3は、現在の国連が果たしている機能をどのように評価するかという問題でもあります。先進国対途上国、指導的な地位にある欧米中露等の利害対立によって、国連が重要な事項について決定ができない、そのために公然とルールと反する行動をとる国が現れる、そうした国へ国連として対処できない、そのために国連への信頼が薄れ、結果的に国連が機能を十全に発揮できないような事態に陥る。こうしたマイナスの連鎖で国連機能が評価されるのと同様に、WTOの機能も評価される事態になるのではないかというのが第3の点です。

    (2)最後にあげた「国連化」現象が焦点です。WTOが多くの不安定要因つまり機能不全化要因を抱えているのは事実です。何と言っても最大の貿易国であるアメリカが最大の貿易赤字を抱えていることは、不安定要因です。また、世界最強の競争力と成長力をもつ巨大貿易国中国のWTO加盟も不安定要因です。また絶対多数を占める開発途上国で貿易の恩恵を享受できているのは一部の国であり、WTOのルールへの不満は高まっており、不安定要因です。他方、WTOの交渉課題は、物品貿易では農産物に絞られますが、他方、サービス貿易や知的財産権をめぐるルール化など輻輳した係争点満載の問題の見直しはこれからです。また貿易と環境、貿易と民主主義問題など政治と密着した問題にも取り組まなければなりません。また先述のヒントで述べたように地域貿易協定の進捗もあります。WTOの組織も事務局の強化、DSBの設置などガット時代と比べれば大きな前進があったにせよ、こうした不安定要因に対処するほどの力はないと思われます。

    (3)こうした不安定要因が顕在化するいろいろなシナリオは想定できます。アメリカが自由貿易を維持できない状況が生まれることも考えられます。このため輸入数量規制や貿易政策介入が強まることがあり得ます。またアメリカの期待に反してサービス貿易や知的財産権分野で進展がなく、WTOへの期待が損なわれ、地域貿易協定締結に大きく傾いていく可能性があります。中国製品の輸入増加に喘ぐ国でセーフガード措置やアンチダンピング措置をとる例が続出して、中国との貿易紛争が世界化したり、一気に貿易の管理化が進む可能性もあります。このようなケースで、WTOが対処できないと、上述3の意味でWTOが「国連化」する可能性は低くはないのでしょうか。そのようなケースでは、リージョナリズムが力を加え、世界の通商は成長性を減速するだけでなく、後退する可能性があります。世界通商にしっかりとリンクされている各国経済は大きな打撃を受けかねません。
第8章のQuestionとAnswer

第8章:Question

  • 【1】
    国際収支の概念と表示方式について説明しなさい。
  • 【2】
    国際収支調整論の二つのタイプについて述べなさい。
  • 【3】
    マンデル=フレミングモデルの基本的特徴について解説しなさい。
  • 【4】
    アメリカが巨大な経常収支赤字を継続できる理由は何か

第8章:Answer

  • 【1】
    国際収支の概念については8.1節aの冒頭部分に記述されています。居住者・非居住者の意味にも注意しましょう。次に国際収支表示については図8‐1、図8‐2をよく理解することが大切です。最新のそれについては「資本勘定」の概念が大きく変わっていますので特に留意してください。
  • 【2】
    8.2節がこれのために割かれた部分です。基本的には価格調整理論と所得調整理論からなります。前者は古典派と新古典派の調整論があり、後者はケインズ派の学説です。「金本位制下のゲームのルール」「弾力性アプローチ」「マーシャル=ラーナーの条件」「外国貿易乗数」「アブソープション・アプローチ」などの概念は理解しておきましょう。
  • 【3】
    国際マクロ経済学の基本的枠組みのひとつです。財(IS)市場と貨幣(LM)市場の交点によって国民経済の均衡を解明しようとするIS-LM分析がその中核となります。要点は図8‐3と数式(8.5)と(8.6)を理解できるかにあります。なぜIS曲線は右下がりになり、LM曲線は右上がりとなるのか、IS1からIS2およびLM1からLM2に変化する条件とメカニズムを説明できなければなりません。この中には閉鎖経済と開放経済における作用の相違も含まれます。
  • 【4】
    まず表8‐1によってその事実を確認しておきましょう。しかし一般的には、経常収支の赤字継続という事実があっても、米国へ外国から資本がそれに見合った形で流入されていれば経常赤字が金融(ファイナンス)されたことになり、ドル危機には直結しないと解釈されています。しかし、本文と「HOT ISSUE」欄で述べているように、それは一時的な解決に過ぎず、結局、経常赤字の継続は米国に対外純債務(借金)の激増という深刻な矛盾をもたらせてしまいました。本章の筆者は、それを体制支持金融論・貿易買掛金残高論という形で理論化しています。
第9章のQuestionとAnswer

第9章:Question

  • 【1】
    世界の三大金融市場の特徴を整理しよう.とくに東京市場の役割がどのように変化したか,その背景は何か、を考えてみよう
  • 【2】
    デリバティブとはどういうものか,なぜ誕生したか,どのようにして拡大したか,考えてみよう
  • 【3】
    1990年代の国際金融危機の特徴を整理してみよう

第9章:Answer

  • 【1】
    主要外国為替市場の規模や取引通貨についてはp.159に説明があります.三大金融市場の特徴は,9.1節bで展開されています.ロンドンが地位を保っているのは,通貨・金融の世界では「慣性の法則」が働いていることに加え,金融革新の努力を続けてきたことが大きいでしょう.1980年代後半に邦銀のプレゼンスが増大し東京市場が興隆しましたが,90年代以降地位を下げました.興隆はバブルによる膨張,地位低下はバブルの剥落が背景にあると考えられます
  • 【2】
    デリバティブ誕生の背景は,9.2節aで変動相場制移行にともなう不確実性への対策として捉えられています.デリバティブが具体的にどのような取引形態をとり,どのように拡大してきたかについては,9.2節bとcがあてられていますが,紙数の制約もあり,あまり詳しく書けませんでした.インターネット「Google」などで検索してみましょう
  • 【3】
    9.3節bに説明があります.1980年代の通貨・債務危機が,財政赤字・インフレーション・経常収支赤字の3点セットを背景としていたのに対し,1990年代には財政収支や物価上昇率でそれほど問題がない国でも,巨額の国際資本の流入とその後の流出によって国際通貨・金融危機が引き起こされました.このことを理解することが重要です.それぞれの国には危機をもたらした固有の要因もありますから,関心のある人は調べて見ましょう
第10章のQuestionとAnswer

第10章:Question

  • 【1】
    国際通貨の諸機能について整理し、基軸通貨とはどのような通貨なのかを論じよう
  • 【2】
    為替替媒介通貨とはどのような通貨であるかを説明し、あわせて円の為替媒介通貨化にはどのような要因が必要であるかを考えてみよう
  • 【3】
    ユーロの導入によって域内の国際決済はどのように変わったのだろうか

第10章:Answer

  • 【1】
    国際通貨と言われる通貨は種々の機能を果たしている。貿易や投資においてドルはもちろん、ユーロや円、ポンドなどの通貨が利用される。とくに、貿易において利用される通貨は上に上げた通貨以外にもかなり多い。その限りでは、それらの通貨も国際通貨としての一機能を果たしていると言えよう。しかし、為替媒介通貨として機能している通貨は数少ない。為替媒介通貨とは、例えば、インターバンク為替市場において円をポンドへ交換する際に、円が一旦ドルに替えられ、そのドルがポンドに替えられるというように、諸通貨間の交換に際して媒介に利用される通貨のことである。

    さらに、ドルやユーロは各国通貨当局が自国通貨の相場を操作する際に基準となっている。アジアやラテンアメリカ、中東諸国等ではドルが、ヨーロッパやアフリカの一部においてはユーロが基準通貨となっている。それゆえ、この2つの通貨は各国通貨当局による為替市場介入の際に利用され、準備通貨ともなっている。

    このように、為替媒介通貨、基準通貨、介入通貨、準備通貨の機能を併せ持つ通貨が基軸通貨である。本文に記したように80年代にマルクは基準通貨にはなりながら、介入通貨でなかった、また、為替媒介通貨ではなかった時期があった。
  • 【2】
    前問への解答のヒントで述べたように、貿易や投資では種々の通貨が利用されている。そうすると、各国の銀行は種々の通貨で持高を持つことになり、そのために種々の通貨の為替調整を行なわなければならない。例えば、日本の銀行はドルやユーロ以外にポンド、バーツ、ウォンなどで持高を持ち、為替調整を行なうことになるが、インターバンクの為替市場では円をポンドやバーツ、ウォンに替える取引はほとんどない。そこで、銀行は円をユーロに替え、ユーロをポンドに替える。また、円をドルに替えて、そのドルをバーツやウォンに替えている。ユーロやドルが為替媒介通貨として機能しているのである。

    ドルに次いでヨーロッパでマルクが、それを引き継ぐようにユーロが為替媒介通貨になったが、円はアジアにおいて為替媒介通貨になれるのであろうか。円がアジアにおいて為替媒介通貨になるには、アジア各国が円で、日本がアジア諸通貨で多くの持高をもつことが条件になる。しかし、アジア各国は自国通貨で輸出を行なっていないし、日本のアジア諸通貨での投資の方もそれほど多くない。したがって、日本の銀行はアジア諸通貨で持高をもつことが限られている。一方、日本は輸出のかなりの額を円で行なっているが、アジア諸国の円での投資はそれほど多くないから、アジア諸銀行の円での持高も貿易が中心に形成されるぐらいである。このように、アジアにおいて円やアジア諸通貨での貿易や投資が盛んになることが、円の為替媒介通貨化の条件であるが、その条件が十分に熟していないのである。
  • 【3】
    ユーロ導入以前、ユーロ参加国はもちろん外国為替を用い、銀行のコルレス関係を利用して相互に国際決済していた。それは、本章の図10‐1と同じである。それでは、通貨統合によってこの決済方法はどうなったのであろうか。通貨統合に関してはまずこのことが問われなければならない。

    ユーロ導入後も従来どおりコルレス関係を用いた決済方法を利用してもいいのであるが、ユーロ導入によって、統一的な決済方法が樹立された。TARGETという域内決済制度がそれで、これによって域内国際決済が国内決済とほぼ同様になしうることが出来るようになった。

    A国のa銀行がB国のb銀行へ決済する場合(A、B両国ともユーロ参加国)、それぞれの銀行は各中央銀行にユーロ建て「預け金」を保有しているから、それを用いるのである。つまり、a銀行のA中央銀行の「預け金」が引き落とされ、b銀行がB中央銀行に保有している「預け金」口座に振り込まれ、その結果、2つの中央銀行間にTARGET・Balanceが形成される。このような決済を可能にするために、ユーロ域内諸国の各中央銀行は国内決済システムを相互に連結し、それに欧州中央銀行の決済システムがつなげられ一つの統一的決済制度(TARGET)を作り上げたのである。
第11章のQuestionとAnswer

第11章:Question

  • 【1】
    途上国の経済発展にとって開発援助はどのような意味で有効なのであろうか。また開発援助が効果をあげるためには、どのような条件が必要なのであろうか。ツーギャップ・アプローチ、ベーシック・ヒューマン・ニーズの充足、構造調整プログラム、包括的開発フレ-ムワークといったさまざまなアプローチから得られる教訓をベースに据えて、検討しなさい。
  • 【2】
    アジア新興工業国の経済発展の経験からどのような教訓が得られるのであろうか。アジア新興工業国は、労働集約的な工業製品の輸出(輸出指向工業化戦略)によって高度成長を達成したと評価されるが、その「強さ」と「弱さ」はどこにあるのであろうか。またアジア新興工業国の経験は、「人間開発」という観点から見たとき、どのように評価されるであろうか
  • 【3】
    「絶対的貧困」問題の解決にとって重要と思われる要因をあげなさい。 そもそも「貧困」とはどういう状態をあらわすのであろうか。貧困の多面性に注意を払って検討しなさい

第11章:Answer

  • 【1】
    この問題を考えるにあたって最も重要な点は、援助受取額の大きさにかかわらず、開発に成功した発展途上国と開発に失敗した発展途上国があるという事実に注意を払うことです。言いかえるならば、発展途上国側に「援助を生かすことができる能力」が備わっているかどうかが、ポイントになります。アジア、アフリカ、ラテン・アメリカ地域の中から、いくつかの途上国を事例にとりあげて、比較研究することをお薦めします。そうした作業によって、「援助を生かすことができる能力」とは何かを理解することができるでしょう。経済的要因、政治的要因、社会的要因に整理して、議論を展開してみましょう。
  • 【2】
    アジア新興工業国の経済発展の経験は、長らく開発の成功例として賞賛を浴びてきました。実際これら諸国の生活は、例えば1970年代には想像もできなかったほど豊かになりました。確かに、これら諸国の成功の鍵は「輸出指向工業化戦略」を採用したことにあると評価できますが、それだけでは不十分です。(1)輸出指向工業化戦略を可能にした条件は何か、(2)輸出指向工業化戦略を支えた政治経済制度とはどのようなものだったのか、という点を考えることが必要です。植民地時代から受け継いだ遺産、国際的環境、土地改革、教育水準、権威主義的政治体制、等をキーワードにして研究を進めてください。そこから新興工業諸国の「強さ」と「弱さ」を発見することができるでしょう。また「人間開発」という観点から評価するにあたっては、「経済的自由」と「政治的自由」との関係を問うことがポイントになります。
  • 【3】
    「絶対的貧困」とはどのように定義された言葉なのか、まず最初に理解してください。その上で、「貧困の多面性」という問題を考えてみましょう。「所得が少ない」という状態は、しばしば様々な「社会的差別」をもたらします。勉強したくても学校にいけない、病気にかかったときにも医者にみてもらえない、働きたくても会社に入れてもらえない、様々な集まりの場に参加できない、等々といった問題です。NHKテレビ番組でおなじみの「おしん」の子供時代のシーンを思い浮かべて下さい。そこから貧困問題解決の手がかりが得られるはずです。貧困問題をなくそうとする政府の意図的な努力、貧困者を差別することのない社会、雇用機会を与えることのできる市場の拡大が主要な手段として考えられます。これらが具体的にどのような形をとるのか、是非検討してください
第12章のQuestionとAnswer

第12章:Question

  • 【1】
    「子供の数が多いから貧困になる」という説に根拠はあるだろうか。もし、逆で「貧困だから子供の数が多くなる」とすれば、その理由は何だろうか
  • 【2】
    「飢餓」、「飢饉」の定義を、辞書や百科事典で調べてみよう。本章で学んださまざまな要因との関係について考えてみよう。
  • 【3】
    レファレンスに掲げられたモーザの書では、「開発と女性」に関する政策が検討されている。それらを整理し、比較してみよう。

第12章:Answer

  • 【1】
    前者は、典型的には、「多産」→「一人当たり食糧が少なくなる」→「栄養不足・栄養不良」→「貧困」という因果の連鎖が考えられます。それぞれの矢印での仮定、前提条件を確認することが大事です。逆だとすると、「貧困」→「子供は労働力」、「子供は老後の保証」→「多産」となります。最初の矢印では、家族、家庭の必要で人々の行動が決まることが仮定されており、第2の矢印には幼児死亡率が高いことが前提になっています。マクロの国民経済全体の議論と、ミクロで人々の行動を議論するときの違いには留意して下さい。
  • 【2】
    まず、「不作、凶作」による「食糧不足」が、共通して定義に使われていることに注目して下さい。「人口」、「異常気象」も、飢饉の原因としてあげられています。「過剰死亡」があるものとないものがあります。世界中で、現実に起きた飢饉のいくつかを調べて、上の「原因」が飢餓・飢饉を説明できるのかどうか検討することは重要です。「戦争」、「開発政策」、「民主主義の欠如」、「環境」なども考えて下さい。飢餓と飢饉の違いは何でしょうか。
  • 【3】
    第三世界の女性のためのさまざまな政策アプローチとして、「福祉アプローチ」、「公正アプローチ」、「貧困撲滅アプローチ」、「効率アプローチ」、および「エンパワーメント・アプローチ」が、モーザの表4.1にまとめられています。これらは、必ずしも単線的に独立、別個のものではありませんが、どういった背景からこれらが提起されたかを理解することは重要です。モーザの「ジェンダー計画」の理論の基礎となるもので、これらのアプローチの違いを理解しておきましょう。「エンパワーメント」を日本語で簡潔に言い表す言葉としては、何が良いでしょうか。
第13章のQuestionとAnswer

第13章:Question

  • 【1】
    アマゾンにおける入植の原因は何か。入植以外の破壊要因は何か。熱帯林破壊を防ぐにはどうしたらよいか
  • 【2】
    身の回りで化石燃料の消費を減らすには、どうすればよいか。その社会的・経済的効果は?
  • 【3】
    食料援助のための募金が役に立っているか否かを確かめるには、どうすればよいか。食料援助が受け手に及ぼす経済的影響は?

第13章:Answer

  • 【1】
    熱帯林地域への入植は、政策的措置によるものでもそうでない場合でも、新規入植者がかつて住んでいた土地(多くの場合は都市部)に定住できなかったことを示している。その原因は多くの場合、移住を余儀なくされるほどの貧困にあると考えられる。したがって都市部における貧困対策は、入植を防ぐひとつの有力な政策手段となり得る(貧困をどのように考えるかについては、第12章を参照)。入植者による焼畑の拡大を防ぐには、生計を維持できる規模の農地を提供し、持続可能な熱帯農業技術を開発・普及しなければならない。また、薪炭材の過剰採取を防ぐには、代替エネルギーの供給が必要であろう。これらの役割を果たすことができるのは誰か? 実際には果たされていないのはなぜか?


    いまひとつの重要な破壊要因は、不正な商業伐採である(240頁)。これを防ぐ方法については、応用問題として先進国に住んでいる読者のみなさんに考えていただきたい。
  • 【2】
    日常生活で化石燃料を直接消費する機会は、おもに交通・移動、および家庭用暖房・給湯などだが、いずれに関しても燃料消費を抑えるにはどうすればよいかを考えればよい(例:なるべく公共交通機関を利用する、自家用車の燃費を下げる、暖房・給湯の火力や利用時間を節約する等)。これらに劣らず重要なのが、電力利用による間接的な化石燃料の消費である。節電の方法はいろいろ挙げられるが、冷暖房機具の清掃や冷蔵庫内の整理、AV機器などの主電源OFFなどは、ちょっとした盲点であろう。
    (参考:省エネルギーセンターHP:http://www.eccj.or.jp/sub_04.html)

    こうした行動が積み重なれば、化石燃料や電力の消費がかなり低下する可能性がある。他方では、省エネ型機器・自動車の需要が拡大したり、風力発電所などの新たな施設が建設されるかもしれない。同時に、従来型の製品や既存施設の廃棄も必要になる。これらの現象が持つ社会的・経済的効果がプラスかマイナスか、それぞれについて考えてみよう。
  • 【3】
    まず、自分がどの団体・個人に募金したのかを確認しておく必要がある。(ごく当然のことですが、募金の経験がある方、確認しましたか?)その団体等が募金の使い道を公開しているか、確かめてみよう(財務内容からもある程度推測することができる)。非営利団体であっても、組織運営そのものには一定の管理費や人件費が必要になるが、明示されているだろうか。例えば、その団体等が食料配給を直接実施していれば、人員派遣・滞在費がかかるはずである。現地の機関や政府に任せきりなら、多くの食料(または金額)が送られているように見えても、飢餓に苦しむ人々に食料が提供されているかどうか、確度は低くなる。また、継続的な食料援助は現地の食料供給を増加させ、食料価格の低下をもたらす可能性がある。その場合、現地の農業生産は、増加するか、減少するか? こうした影響は、長期的な食料安全保障という観点から見ると、プラスかマイナスか?
第14章のQuestionとAnswer

第14章:Question

  • 【1】
    市場と国家の関係について国際政治経済学(IPE)の枠組みを使って考えてみよう
  • 【2】
    グローバル時代における覇権国の役割とその変貌について考察しよう
  • 【3】
    パワーシフトと知の時代の到来について、諸君はどんな夢を抱くか。その積極面と否定面の双方について考察しよう。

第14章:Answer

  • 【1】
    IPEは国際問題を政治と経済との相互作用として解いていく手法を使っていますが、市場(経済)と国家(政治)との関係はその代表的な問題のひとつです。市場の動向を自由にして、国家の干渉をできるだけ行わないようにすることによって、事態は自ずと好ましい状態――「見えざる手」による予定調和――に達すると考えるのが、伝統的にリベラリズム(自由主義)の主張ですが、実際には、さまざまな要因が働くため、こうした理想的な状態はなかなか起こりません。そこで、国家の支援や調整や介入によって事態を理想的な状態に近づける努力が行われてきました。これを国家の経済的力能と呼んでいます。基本的には独立の諸国民経済が貿易や投資や金融や移民などによって結び合わされている国際経済社会――人によっては世界経済システムと呼びますが――にあっては、こうした国家の国益を背景にした行動が互いに競い合うような状態がしばしば起こり、そこでは世界連邦といったそれらを束ねるものがないため、無政府性――ジャングルの法則――が横行しがちです。そのため、リアリズム(政治的現実主義)と呼ばれる国家中心的な考え方が支配的になってきます。しかしこうした国家中心的な考えや行動が過熱すると、国際社会は収拾のつかない混乱に陥る危険があります。そこで、第2次大戦後の世界では覇権国のヘゲモニーの下でIMFやGATTなどの国際機関――国際レジームとしての性格をもつ――ーを活用して国際的な利害調整と妥協を図る努力がなされ、国際協調が定着してきました。その結果、モノ、ヒト、カネ、情報の国際的な自由な移動と活動が保障されるようになっています。このように、国家と市場とは相互に作用し合いながら、それぞれの役割を発揮し合うことによって、好ましい状態を国際的に作り上げることができます。その意味では両者は相互補完的で互助的なものだといえます。
  • 【2】
    ソ連の崩壊に始まる冷戦体制の終焉はアメリカの軍事的・政治的力を突出させることになりました。同時にIT革命に基礎をおく知識中心の時代――サービス経済化――の出現は「ニューエコノミー」の提唱とも結びついて、アメリカ経済の繁栄をもたらしました。これらの結果、モノ、カネ、ヒト、情報が国境を超えて頻繁に移動するグローバル化の進展の中で、覇権国としてのアメリカの地位と役割は格段に強まっています。第2次大戦後の世界が東西対立や南北格差――冷戦対抗――はあるものの、西側世界の間での協調が保たれてきたのには、アメリカの協調主義的な姿勢とヘゲモニーの発揮によるところが大でした。しかしポスト冷戦時代におけるその政治的・軍事的・経済的力の突出によって、アメリカはこうした姿勢を脱ぎ捨てて、自己の要求――「国益」と称するもの――をしゃにむに実現しようとする強圧的・独善的・攻撃的な姿勢が逆に目立つようになっています。これをマルチラテラリズム(多角主義)からユニラテラリズム(一国主義)への転化と呼んでいます。こうした傾向は世界の政治的安定と経済的拡大と生活の向上にたいする大きな障害になりかねません。今日では、世界が多様な形態を保ちつつ、それぞれの特色に応じた発展の道を辿り、協調し合い、共に平和的に繁栄する可能性が大きく開かれています。その中では、これまでにもまして、アメリカの役割は大きくなっています。国連などの国際機関と手を携えて、世界の前進のためにヘゲモニーを有効に発揮することがアメリカの使命のはずですし、そうしてこそアメリカの威信が高まります。しかしグローバリゼーションをアメリカナイゼーション(世界のアメリカ化)と錯覚して、自国の利害や主張を無理矢理強要することに狂奔すると、世界中の良識ある人々の信頼を失い、孤立し、最後には衰退へと向かわざるをえないことは、これまでの幾多の覇権国の衰退が雄弁に物語っているところです。また世界はアメリカのこうした理不尽な行動を許してはなりません。
  • 【3】
    情報化時代の到来はなるほどわれわれの日常生活や仕事――学生諸君の場合は勉学――の面で大きな便益をもたらしています。時間と空間の障害を突破するその便益に関しては改めて強調するまでもないでしょう。諸君はそれぞれに個性的で、気宇壮大な夢を持っているはずでしょうから、それらを語り合ってみましょう。きっと楽しいはずです。私は戦後の「焼け跡世代」の人間なので、手塚治虫の描くロボット――特に鉄腕アトム――の未来に夢を馳せました。人によっては、W・G・ウェルズやジュール・ヴェルヌのSF小説に痺れたかもしれません。しかし、今日、ロボット化の進む21世紀をバラ色一色で描くことはあまりに楽観的にすぎるでしょう。SF小説や映画の中でもその否定的で悲観的な将来――たとえば「ブレードランナー」など――が多く語られています。科学技術の発展が人間に肯定的で楽観的な未来だけを約束していないのは何故か。それらを次に考えてみましょう。そこには社会的、経済的、政治的な要因が大きく働いているはずです。これらを一括して、「ポスト・モダン」という言葉でしばしば表しますが、21世紀世界がわれわれにどんな未来とそのための障害除去の課題を与えているか、それぞれに出し合ってみましょう。そして最後に自らの足元を見つめ直して、バラ色の未来に向けて何ができるか、そしてまた何をしなければならないかをじっくりと省察してみましょう。これらのことを考えるヒントとして、機械やコンピュータへの過度の信頼や依拠が人間の判断力の後退や欠如を生み、それがやがては人間自体の創造力の喪失へとつながりはしないかという、文明化の「落とし穴」があることをあげておきましょう。
正誤表

正誤表

第1章:p.1

誤:第2次大戦を境に…パクス・ブリタニカから…

正:第2次世界大戦の終結を境に…パクス・ブリタニカから…

第1章:p.3

誤:石油価格の3倍化

正:石油価格の4倍化

第2章:p.98 Questions5

誤:X-M0

正:X-M

ランキング

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

未来の働き方を描いたベストセラー『ワーク・シフト』の著者が教える、100歳時代の生き方と働き方。戦略的人生設計の必読書。 (2016年10月21日発売)
定価:1,944円(税込)
まんがでわかる 地頭力を鍛える

まんがでわかる 地頭力を鍛える

20万部突破のロングセラー『地頭力を鍛える』がコミック化!入社5年目のがけっぷち困ったちゃんOLが、地頭を鍛えて無敵になる! (2017年06月30日発売)
定価:1,404円(税込)
MBA100の基本

MBA100の基本

これ以上やさしく書けないMBAのエッセンス。100の基本コンセプトを軸に、復習にも使える仕事・ビジネスの便利帳。 (2017年01月20日発売)
定価:1,620円(税込)

朝9時10分までにしっかり儲ける板読み投資術

薩長史観の正体

世界一訪れたい日本のつくりかた

丹羽宇一郎 戦争の大問題

寂しい生活

地頭力を鍛える

いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編

RSS一覧 WHAT'S NEW

記事一覧インフォメーション