北京大学中国経済講義

林 毅夫著/劉 徳強訳
2012年8月31日 発売
定価 4,180円(税込)
ISBN:9784492443910 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:288


中国人として初の世銀チーフエコノミストとなった著者が、母校の北京大学で行った講義録。中国の成長と失敗の神秘を解き明かす



1970年代後半に改革を開始した中国は、斬新的な「双軌制」を採用したが、この政策は世界の学術界から疑問視されたものであった。しかし中国は、30年にわたる急速な経済成長を実現し、「中国の奇跡」を作り上げた。



一方で、ワシントン・コンセンサスに基づいて改革を推進していた他の発展途上国の多くは、経済崩壊と長期停滞に陥った。



この経験が示すのは、近代経済学で発展した経済理論は主に先進国出身の経済学者によって提案され、先進国の経済現象を解釈し、先進国の問題を解決するためのものであることである。しかし、先進国が直面するチャンスと課題は途上国のものとは異なっている。そのため、先進国に合う経済理論が発展途上国に適用できるとは限らない。



各国は、その政治、経済、社会面においてそれぞれに特徴をもっており、それにふさわしい経済成長理論を考えるべきである。各国の知識人は、自分の国をより深く理解すべきであり、それを通じて、自分の国の近代化の性質や、理論的枠組みを構築することができる。中国の成長と失敗の神秘を解き明かした研究の集大成であり、中国だけでなく、他の発展途上国の将来の発展に光を当てることができる。


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概要

欧米以外の出身者として初の世銀チーフエコノミストとなった林教授が北京大学で行った講義録。中国経済の課題と解決策をわかりやすく説き、中国発経済学の構築が必要だと熱く語る。

目次



第1章 中国経済発展のチャンスと課題
第2章 なぜ、科学革命と産業革命が中国で起きなかったのか 
第3章 近代の屈辱と社会主義革命 
第4章 比較優位に反するキャッチアップ戦略と伝統的な経済システム
第5章 企業の自生能力と要素賦存
第6章 比較優位に従う発展戦略
第7章 農村改革と三農問題
第8章 都市改革と残された課題
第9章 国有企業の改革に向けて
第10章 金融改革
第11章 デフレ拡大と社会主義新農村建設
第12章 市場システムの完備、公平と効率の促進、調和のとれた発展の実現
第13章 新古典派理論への反省
付 録 グローバル・インバランス、準備通貨と世界経済のガバナンス

著者プロフィール

林 毅夫
Justin Yifu Lin

北京大学国家発展研究院教授。
1952年台湾生まれ。1978年台湾政治大学企業管理研究所卒業、企業管理修士学位取得。1979年北京大学経済学系に入学、1982年経済学修士学位取得。同年、米国シカゴ大学に入学、T.W.シュルツ教授に師事し、1986年経済学博士学位取得。その後1年間イェール大学でポスト・ドクターを経て、1987年に帰国。国務院農村発展研究中心発展研究所副所長、国務院発展研究中心農村部副部長を経て、1994年に北京大学中国経済研究中心を設立し、所長に就任。2008年に世界銀行チーフエコノミスト兼上級副総裁に就任、2012年に帰国。

論文・著書に、"Rural Reforms and Agricultural Growth in China," American Economic Review, 82(March 1992)、『制度、技術和中国農業発展』(上海人民出版社与三聯出版社、1993年)、『中国的奇跡:発展戦略与経済改革』(上海人民出版社与三聯出版社、1994年、共著)『充分信息与国有企業改革』(上海人民出版社、1997年、共著)など多数。

劉 徳強  【訳者】
りゅう・とくきょう

京都大学大学院経済学研究科・地球環境学堂教授。
1963年中国山東省生まれ。1986年東京都立大学経済学部卒業。1988年一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了、修士学位取得。1991年同博士課程満期退学(経済学博士)。1991年東京都立大学経済学部助手、1992年東京学芸大学教育学部講師に就任、その後助教授を経て、2007年教授。2008年京都大学大学院経済学研究科教授、2012年京都大学大学院地球環境学堂教授。

主な著書、論文に『中国のミクロ経済改革:企業と市場の数量分析』(日本経済新聞社、1995年、共著)、"A Comparison of Management Incentives, Abilities, and Efficiency between SOEs and TVEs: The Case of the Iron and Steel Industry in China,"Economic Development and Culture Change, 52(4), 2004(共著)などがある。