中国経済の転換点

南亮進編著/牧野文夫編著/?仁平編著
2013年3月15日 発売 在庫なし
定価 4,180円(税込)
ISBN:9784492443941 / サイズ:A5/上/258

中国農村の過剰労働力は消滅したのか?
都市部労働者の賃金は上がり続けるのか?
――開発経済学の立場から東アジア各国の「ルイス転換点」を比較。そして特に、世界経済への巨大なインパクトを有する中国の労働市場を、制度面を含めたさまざまな視点から詳細に分析!
【中国語版・韓国語版との同時刊行!】
工業化の過程で農業部門の余剰労働力が底をつき、工業部門に雇用が奪われる時点を「ルイスの転換点」と呼ぶ。ルイスの転換点を過ぎると、労働力不足が生じ、賃金の上昇が起こるため、経済成長の過程において「ルイスの転換点」は重要なターニングポイントとなる。本書では、中国についてはまだその段階に達していないと考え、中国の労働市場の現状を実証分析により明らかにする。
 第1部【東アジア主要国の経験:ルイス転換点を巡って】では、日本、韓国、インドネシア、中国、台湾と東アジア諸国のルイス転換点について、その歴史的経験をまとめる。そこから、ルイス転換点とはどんな状態を意味し、それを超えることでどんな影響が現れたのかを明らかに。さらに、他の国との比較から、改めて中国の現状を分析し、その特徴を明らかにする。
第2部【中国労働市場の構造変化:実態と要因】は、中国の労働市場のさまざまな側面の分析であり、本書の中心的な結論部分を支える背後の問題を整理している。
第3部は、全体の総括と結論となる。
 本書の見解は、中国はいまだ転換点を通過しておらず、農村の過剰労働と一部都市の労働不足とが共存しているというものである。過剰労働が存続すれば所得・賃金格差は拡大し続け、全体の所得分布はいっそう悪化することになる。

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概要

中国農村の過剰労働力は消滅したのか?都市部労働者の賃金は上がり続けるのか?各国比較及び制度面も含め、中国労働市場を詳細に分析

目次

【第1部 東アジア主要国の経験:ルイス転換点をめぐって】

第1章 日本の転換点:労働市場の基調変化とその意味 南亮進
Ⅰ転換点分析の方法
Ⅱ実質賃金と賃金格差
Ⅲ農業賃金と労働生産力との関係

第2章 韓国労働市場の構造変化と転換点 金昌男
Ⅰ雇用吸収力と農業労働力の流出
Ⅱ製造業の実質賃金と労働供給の弾力性
Ⅲ農業労働力の限界生産力
Ⅳ所得分配

第3章 インドネシア農業の過剰労働と貧困世帯の分布 本台進・中村和敏
Ⅰ農業賃金の変化
Ⅱ農業労働の限界生産力と農業名目賃金
Ⅲ農村経済の変貌

第4章 中国労働市場の変貌と転換点 南亮進・馬欣欣
Ⅰ都市労働市場の「変貌」
Ⅱ農業生産関数と過剰労働力の計測
Ⅲ農業労働力の流出と郷鎮企業の雇用吸収力

【第2部 中国労働市場の構造変化:実態と要因】

第5章 人口転換と就業変化 蔡昉・王美艶・曲● (●は王偏に月)
Ⅰ人口転換とルイス転換点
Ⅱ労働市場に対する人口転換の衝撃
Ⅲ労働集約的産業はどこへ行くか
Ⅳ内陸地域の人口ボーナス

第6章 人口移動の変容と労働市場の構造変化 高田誠・李旭
Ⅰセンサス・データによる人口移動の特徴
Ⅱ四川省および広東省人口センサスによる移動人口の比較

第7章 農地流動化と農業経営の変容:浙江省奉化市の事例を中心に 寳剱久俊・蘇群
Ⅰ中国の農業経営と農地流動化の進捗状況
Ⅱ農地の制度的枠組みと流動化の類型化
Ⅲ農地流動化の分析フレームワーク
Ⅳ浙江省奉化市農家調査データによる実証分析

第8章 都市・農村所得格差と労働移動 薛進軍・高文書
Ⅰ農村労働人口移動と所得格差計算の問題点
Ⅱ農村労働移動と中国所得格差統計の問題点
Ⅲ都市・農村所得格差の再推計
Ⅳ所得格差と労働移動

第9章 流動人口の住宅問題:上海市の事例を中心に 厳善平
Ⅰ流動人口とその居住状況
Ⅱ上海市における流動人口の居住状況
Ⅲ戸籍住民と流動人口の居住状況比較:上海市を中心に
Ⅳ居住形態および居住面積の規定要因

第10章 外資企業の雇用創出 杜進・石塚浩美
Ⅰ外資企業のプレゼンス
Ⅱ先行研究のサーベイと「余剰の捌け口」理論
Ⅲ外資企業の雇用効果の推定

【第3部 総括】

第11章 東アジアの歴史との比較から見た中国の転換点 南亮進・牧野文夫
Ⅰ転換点の国際比較
Ⅱ東アジアと中国の転換点
Ⅲ転換点通過の経済・社会的帰結

著者プロフィール

南亮進  【編著】
みなみ りょうしん

1933年生。経済学博士(一橋大学)。一橋大学経済研究所・教授、東京経済大学・教授、城西大学・教授を経て、東洋大学・客員研究員/一橋大学名誉教授。
主要著書:『日本の経済発展 第3版』東洋経済新報社、2002年。『中国の教育と経済発展』東洋経済新報社、2008年(共著)。
主要論文:「中国高度成長の要因と帰結:日本との比較」『中国経済研究』第2巻第1号、2004年3月。「中国経済の転換点:日本との比較」『アジア経済』第50巻第12号、2009年12月(共著)。

牧野文夫  【編著】
まきの ふみお

1951年生。経済学博士(一橋大学)。東京学芸大学教育学部教授を経て、法政大学経済学部・教授。
主要著書:『日本の経済発展 第3版』東洋経済新報社、2002年(協力)。『中国の教育と経済発展』東洋経済新報社、2008年(共著)。
主要論文:「中国の経済格差、階層分化と教育:子どもの成績に対する親の属性の影響」『経済科学』(名古屋大学)第60巻第2号、2012年9月(共著)。「所得格差、社会階層から見た最近の中国の教育問題」『東亜』527号、2011年5月(共著)。

?仁平  【編著】
かく じんぺい

(「カク」は「赤」におおざと。)1962年生。一橋大学大学院博士後期課程単位修得、経済学修士。諏訪東京理科大学・助教授を経て、東洋大学経済学部・教授。
主要著書『転型時期中国的工業化和労働市場』(監訳、南・牧野編、中国水利電力出版社、2005年)。『中国の外資政策と日本企業』勁草書房、2009年(分担)。主要論文:「後発国工業化における政府と民間の関係に関する一考察『経済論集』(東洋大学経済研究会)第31巻第2号、2006年2月。「中国内陸部における労働市場と過剰労働:県(市)別データによる分析」『東京経大学会誌 経済学』第275号、2012年12月(共著)。