戦略の創造学

ドラッカーで気づき、デザイン思考で創造し、ポーターで戦略を実行する

山脇 秀樹著
2020年4月24日 発売
定価 1,980円(税込)
ISBN:9784492534236 / サイズ:A5変/上/268

欧米ビジネススクールで初めての日本人学長による
イノベーションのための戦略論

筆者の学問の専門領域はミクロ経済学の応用分野である産業組織論と国際経済学です。経済学の博士号を取得した後25年近くは、この領域を研究し、講義を担当してきました。1995年に欧州から米国に移ってからは、産業組織論とその理論的基礎をとする競争戦略論に領域を広げました。競争戦略はマイケル・ポーターが1980年に出版した著書Competitive Strategyにその端を発するといっても過言ではないでしょう。

筆者をデザイン思考に向かわせたのは、ドラッカースクールの講義での学生からの質問です。
「新しい事業機会は、どうやって見つけるのですか?」
講義で、イノベーションは大事だからイノベーションを起こしなさいとあなたはいつもいうけど、じゃあ実際、一体どうすればよいのですか、という本質とこちらの痛いところをついた質問です。「新しいアイデアを創出する現場」から直感的に学習しなければならないと思うようになりました。
そうした思いを抱えるようになって、ロサンゼルスのダウンタウンから20キロぐらい離れたパサデンという町にあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインを訪れ、「デザイン思考」に出会うことになりました。

デザイン思考、ピーター・ドラッカーのマネジメント、そして競争戦略。
この3つは、時と分野を隔てて構築されたものですが、そのそれぞれの本質を紡ぐと、糸になり、その糸を織ると普遍的な戦略モデルのキャンバスとなるのです。そして、3つの思考を組み合わせたキャンバスの上に、新しい世界観と意味を創り、それに基づいた目的とビジョンを達成するための戦略を構築していきます。







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概要

戦略はドラッカーで気づき、デザイン思考で創り、ポーターで実行・競争する。イノベーティブな戦略の創造法を解説。

目次

Chapter1 なぜ、新しいモデルが必要なのか 
日本が誇る「課題解決のための発想」とデザイン思考
国際市場における日本企業の栄枯衰退と企業・競争戦略
目的・ビジョンとドラッカーのマネジメント 

Chapter2 ビジネスの目的・使命・ビジョン 
すでに起こった未来--シュンペーターとドラッカー  
政治・経済地政学の変化 
GenZと技術変化

Chapter3 観察から洞察へ
不調和「アジア系はもはや米国の市場のメインストリーム?」
認識の変化「防弾少年団、ワンオクを受け入れる社会」
認識の変化「技術が通念を変え、行動を変える」  
産業と市場の変化「新規企業の参入で地殻変動」  

Chapter4 顧客にとって新しい「意味」を創る
購買決定の瞬間を考えることで見える「意味」 
日本を象徴するような製品・企業が創り出した「意味」 

Chapter5 新しい意味を創る「予備的分析」
過去・現在・未来 
観察から洞察へ、そして機会を見出す 

Chapter6 共感を生むためのツール「デザイン思考」
カスタマー・ジャーニー・マッピングーー顧客の心の動きをとらえる
マインド・マッピングーー考え/感情を理解し共感を深める 
ぺルソナーー平均ではなく極端なユーザーを描く
ブレーンストーム「もしすべてが可能なら?」 

Chapter7 世界観と意味
ビジョンーー主観的に世界観を創り、将来のシナリオを描く
世界観ーー新しい意味をつくるには自己の世界観が必要
感情移入ーーペルソナの体験から共感を引き出す

Chapter8 新しい戦略モデルを構築する 
戦略とは何か 
「良いものを安く」戦略  
創られた価値の成分 

Chapter9 戦略構築の土台 
規模の経済性 
サンクコスト 
ポーターのファイブ・フォース分析の動学化 

Chapter10 どのように目的を達成するのか 
共感と未来の戦略「利益をイノベーションに投資し将来に備える」  
ビジネスモデル--“モデル”とは模型!? 

Chapter11 どこで目的を達成するのか 
どこで目的を達成するのか【プロセス】
消費者が見るもの--豊田章一郎氏の指先 

Chapter12 共感と未来のマネジメント 
デザイン思考を企業のシステム優位性に結びつける
企業の内部と外部、そして未来との整合性

著者プロフィール

山脇 秀樹  【著】
やまわき ひでき

慶應義塾大学経済学部卒業、同大学大学院経済学修士課程修了。1982年にハーバード大学経済学博士号取得 (Ph.D.)。ハーバード在籍時の指導教授は、マイケル・ポーターの指導教授と同じリチャード・ケイブス。1982年より旧西ドイツ国立ベルリン社会科学研究所上級研究員、1990年よりベルギーのルヴァーン大学経済学部教授。その後1995年よりカリフォルニア大学ロサンジェルス校(UCLA)アンダーソン・マネジメントスクール客員教授を併任し、2000年よりカリフォルニア州クレアモントにあるピーター・F・ドラッカー経営大学院教授。2006年度より同校副学長、2009~12年度に学長を務める。欧米のビジネススクールにおける初の日本人学長。