カオティクス

コトラー,P.著/キャスリオーネ,J.A.著/齋藤 慎子訳
2009年9月11日 発売
定価 1,980円(税込)
ISBN:9784492556535 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:288



編集者コメント







 「どのくらい深刻なのか。どの程度続くのか」。


 2008年の米国で金融危機が突然発生したときに「近代マーケティングの父」フィリップ・コトラーと共著者のジョン・A・キャスリオーネは会う人、会う人にこう尋ねられたという。だれもが知りたがったのは、一時的な不況なのか、深刻な景気後退なのか、それとも大不況なのかということだった。


 彼らの答えは、乱気流時代とも呼べる、新しい時代に入っているということであった。金融危機はほんの一時的なのかもしれない。従来まではこうした嵐の後には「通常」状態に戻るものであったが、これからはさまざまなレベルで乱気流が断続的に起こるというのが彼らの認識だ。


 これを聞いて悲観するのは早計だ。不況もまたよしなのである。不況は転換点であり、実際、不況を境に多くの業界・業種トップクラスの4分の1~3分の1が過ちを犯し、転落し、トップクラスとは言えなかった企業が台頭するとも述べている。「売上げ挽回のための値下げ」「マーケティング費の削減」「全社一律のコスト削減・人員削減」「仕入先や販売業者を締めつける」、こうした不況期にありがちな対応はほとんどの場合は過ちで、企業の命取りになるとすら指摘する。不況を逆手にとり、機会を見出した企業が躍進するのだ。逆手にとるにはどうしたらよいか。


 カオティクスという仕組みを備えることである。カオティクスとはリスクと不確実性を察知するための早期警報のしくみ、それらに対応するためのシナリオプランニングのしくみを企業の中に戦略として埋め込み、反応力が高く、強靱で、弾力性(回復力)のある組織をつくることだと説く。


 著者陣はともに米国人であるが、短期的に利益を出そうとする、俗に言うアングロサクソン経営に対しての見方が非常に厳しいのが面白い。過去に乱気流を生き残った長寿企業を引き合いに出しながら、生き残る、しかも長期にわたって繁栄を収めるために何が必要かを解説している。

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概要

好景気→不況→好景気……を繰り返す経済から、景気が乱高下する経済に変わった。この波乱の時代を乗り切るにはカオティクス(混乱に備え活かす管理手法)が必要。その全貌を明かす。

目次


序 章 乱気流とカオスに対応する
第1章 ノーマルからニューノーマルへ
第2章 乱気流への対応を間違うと命取り
第3章 カオティクス・マネジメントの全体像
第4章 カオティクスによる戦略的対応
第5章 カオティクス・マーケティング戦略
第6章 「波乱の時代」を逆手にとる

 

著者プロフィール

フィリップ・コトラー
Philip Kotler

ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院インターナショナル・マーケティングS・C・ジョンソン・アンド・サン・ディスティンギッシュド・プロフェッサー。「近代マーケティングの父」と目されている。
代表的な著書である『マーケティング・マネジメント』は第13版まで出ており、MBA(経営学修士号)取得を目指している人々に世界中でもっともよく読まれているマーケティングのテキストとなっている。
『マーケティング原理』『コトラーのマーケティング・コンセプト』『コトラーのマーケティング思考法』『地域のマーケティング』『社会的責任のマーケティング』ほか、30冊を越える著書がある。
IBM、バンク・オブ・アメリカ、GEほか、さまざまな企業の顧問も務めている。

ジョン・A・キャスリオーネ
John A. Caslione

グローバル経済の専門家。現在、世界規模のM&Aのアドバイスを行なう、GCSビジネス・キャピタルの創設者兼社長である。
国際経営コンサルタント会社のアンドリュー・ウォード・インターナショナルの創設者兼社長でもあった。これまでに経営戦略の実施にかかわったのは、アジア・ヨーロッパ・アフリカ・北アメリカ・南アメリカ・オーストラリアの88カ国に広がっている。
現在、顧問を務めている企業の中には、ABB、エクソンモービル、GE、ヒューレット・パッカード、ジョンソン・エンド・ジョンソン、IBM、フィリップスなどがある。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院では客員講師として、グローバル・ビジネスについて講義している。
グローバリゼーションと、新興成長市場も含めたグローバル・ビジネス戦略に関する著作もある。
ニューヨーク州立大学(バッファロー校)でMBA、シカゴケント法科大学院で法務博士を取得。