年金制度の展望

坪野 剛司監修/年金綜合研究所編/吉原 健二著/畑 満著/佐野 邦明著/清水 信広著/小野 正昭著/宮島 洋著/若杉 敬明著/酒井 英幸著/近藤 師昭著
2017年12月1日 発売
定価 4,180円(税込)
ISBN:9784492701478 / サイズ:サイズ:A5判/ページ数:328

議論のベースを示し誤解をとく



◇日本では年金をめぐる社会環境は、一部の誤解による悪い風評が広がり、特に若い人の信頼性が著しく低い状況が続きました。

◇現実には、日本の年金は1日の遅れもなく確実に支給され、その総額も平成28年度には国税収入とほぼ同額の約55兆円に到達しました。

◇日本の人口1億2,700万人のうち約7,000万人が年金に加入し、約4,000万人の年金受給者があり、その約6割が年金収入だけで生活し、高齢者の収入の約7割が年金所得からとなっています。日本の公的年金に不信・不安が続くことは、高齢者はもちろん若者にとってもけっして好ましいことではありません。特に、年金の持続可能性を実証し、制度の安定を確保することが最も重要です。

◇年金制度ができて70年間を経て、どこに誤解があるのでしょうか。公的年金・企業年金をめぐる誤解にはさまざまなものがあります。

●社会の変化で時代に合わなくなっている点はないか

●年金先進国の趨勢と乖離していることはないか

●今の制度に論理的な問題はないか

●度重なる改正で複雑になりすぎ、世論の理解との間に距離はないか

●日本の人口推移を基に将来を見直し、改革が遅れている部分はないか

◇本書では、年金制度をめぐる誤解を解消するために、経済学・財政学・法学・年金数理・会計学・運用理論などの知識を融合し、日本の公的年金・企業年金の課題を分析し将来を展望します。

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概要

日本の年金制度の課題は、公的年金にとどまらない私的年金を含めた一体的な解決が課題になる。改革議論のたたき台・出発点を示す。

目次

序章:わが国の公的年金制度
第1章:公的年金に対する現状認識と課題
第2章:国際比較からわかる日本の年金制度
第3章:高齢期の所得保障と企業年金制度
第4章:企業年金の普及と持続可能性
第5章:年金制度と税制
第6章:ガバナンス強化を目的とする企業年金検査制度の提案

著者プロフィール

坪野 剛司  【監修】
つぼの つよし

1960年厚生省入省。1985年年金局数理課長、1991年総理府社会保障制度審議会事務局年金数理官、1994年内閣官房内政審議室内閣審議官、1996年厚生年金基金連合会常務理事などを歴任。
2001年全労済参与、2005年早稲田大学大学院客員教授、公益社団法人日本年金数理人会顧問評議員。公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構評議員。2004年より東京工業大学大学院非常勤講師。2012年より名古屋大学大学院非常勤講師。2012年10月より年金綜合研究所理事長。
主な著書に、『新企業年金(第2版)』(編著、日本経済新聞社)、『ASEANの社会保険実務』(監修、東洋経済新報社)などがある。

年金綜合研究所  【編】
ねんきんそうごうけんきゅうじょ

年金制度は、わが国の社会に定着し高齢者の多くが年金収入を生活の糧としております。地域社会においてもその経済に大きな貢献を果たしております。豊かで不安のない人生を送るためには、社会保障制度の充実、とりわけ年金制度への信頼性の確保が重要です。
一般社団法人年金綜合研究所は、信頼性の確立とその持続可能性を専門家集団の知識を集約し、客観的かつ長期的観点からの学術的研究により、政策提言を行うなどを目的として2012年(平成24年)10月1日に創設されました。

吉原 健二  【著】
よしわら けんじ

1955年東京大学法学部卒業、同年厚生省入省。年金局長、厚生事務次官などを歴任して、1990年厚生省退官。
その後、厚生年金基金連合会理事長、財団法人厚生年金事業振興団理事長、人口問題審議会、社会保障制度審議会、児童福祉審議会、財政審議会資金運用審議会等の委員、公益財団法人難病医学研究財団理事長、公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構評議員をつとめ、現在は一般社団法人年金綜合研究所評議員、公益財団法人難病医学研究財団評議員。

畑 満  【著】
はた みつる

1977年大阪大学大学院理学研究科修士課程修了(理学修士[数学])、同年厚生省入省。保険局調査課長、年金局首席年金数理官、社会保険診療報酬支払基金審議役を経て、2011年より全国労働者共済生活協同組合連合会共済計理人(現職)。この間、大阪大学大学院基礎工学研究科非常勤講師、明治大学商学部兼任講師、東京工業大学大学院社会理工学研究科非常勤講師、東北大学大学院理学研究科非常勤講師などをつとめる。年金数理人、日本アクチュアリー会正会員。
主要著作に、『日本公的年金制度史』(共著、中央法規出版、2016年)、『年金制度が破綻しないことがよくわかる年金Q&A』(共著、TAC出版、2012年)、など。

佐野 邦明  【著】
さの くにあき

1975年学習院大学理学部数学科卒業、同年三菱信託銀行入社(現・三菱UFJ信託銀行)、年金業務部長、年金コンサルティング部長などを経て、2014年より㈱シーエーシー 専門顧問(現職)。この間、年金数理人会理事、副理事長をつとめる。
主要著作に、『転換期の企業年金制度』(共著、ぎょうせい、1995年)、『企業年金ガバナンス』(共著、中央経済社、2007年)、『図解 退職給付会計はこう変わる!』(共著、東洋経済新報社、2013年)など。

清水 信広  【著】
しみず のぶひろ

1979年京都大学理学部卒業、1981年同大学大学院理学研究科修士課程修了、1982年同博士課程中退。同年厚生省入省。厚生年金基金連合会企画事業部次長、GPIF資金運用専門役・同運用部長、農業者年金基金年金計理人、厚生労働省年金局首席年金数理官などを経て2016年3月厚生労働省退官。
2016年6月より全国生活協同組合連合会常勤監事。理学博士、日本アクチュアリー会正会員(理事)、日本年金数理人会正会員、日本証券アナリスト協会検定会員。国際アクチュアリー会年金・給付・社会保障セクション(PBSS)運営委員会委員(書記)。
主要著作に、「給付建て企業年金におけるリスク分担手法の再検討」『年金数理人』No.17、2006年8月、pp.23-33、㈱日本年金数理人会(日本年金数理人会第1回企業年金研究賞優秀論文賞受賞論文)など。

小野 正昭  【著】
おの まさあき

1979年東京大学理学部卒業、同年安田信託銀行(現・みずほ信託銀行)入社。 安田年金研究所(現・みずほ年金研究所)主席研究員・年金研究部長、みずほ年金研究所研究理事を経て、2017年よりみずほ信託銀行株式会社年金研究所主席研究員(現職)。
日本アクチュアリー会正会員(参与)、年金数理人、社会保障審議会臨時委員、労働政策審議会臨時委員、中小企業政策審議会臨時委員などをつとめる。


宮島 洋  【著】
みやじま ひろし

1966年東京大学経済学部卒業、1972年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得・退学。信州大学経済学部助教授等を経て、1985年東京大学経済学部教授、同経済学部長、同副学長、2003年早稲田大学教授。東京大学名誉教授、経済学博士。税制調査会・経済審議会・社会保障審議会等委員を歴任。
主要著作に、『租税論の展開と日本の税制』(日本評論社、1986年)、『高齢化時代の社会経済学』(岩波書店、1992年)、『講座 社会保障と経済(全3巻)』(共編著、東京大学出版会、2009年・2010年)など。


若杉 敬明  【著】
わかすぎ たかあき

1966年東京大学経済学部卒業、1968年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。横浜市立大学商学部助教授、東北大学経済学部助教授等を経て、1985年東京大学経済学部教授、2004年定年退官後、東京経済大学経営学部教授(2013年退職)。1990年よりミシガン大学ロス・ビジネススクール三井生命金融研究センター共同理事、現在に至る。
東京大学名誉教授。日本経営財務研究学会会長、郵政審議会委員、国民生活審議会委員、社会保障審議会委員、㈱リコー取締役、JFEホールディングス㈱監査役、㈱NTTドコモ監査役、日本水産㈱取締役等を歴任。
主要著作に、『企業財務』(東京大学出版会、1989年)、『新版入門ファイナンス』(中央経済社、2011年)など。


酒井 英幸  【著】
さかい ひでゆき

1970年東京大学法学部卒業、同年厚生省入省。企業年金課長、内閣審議官、官房国際課長、統計情報部長、職業能力開発局長等を歴任。日本製薬団体連合会理事長等を歴任後、現在、全国生活協同組合連合会理事長等。
主要著作に、『国際化時代の社会保障』(勁草書房、1998年)、『新発見!ライフサイクルで見る統計』(共著、中央法規出版、1998年)など。


近藤 師昭  【著】
こんどう のりあき

1961年埼玉大学文理学部卒業、同年三井生命保険相互(現・株式)会社入社。企業福祉制度推進部長、営業企画部長、常務取締役、顧問。この間、日本年金数理人会会長、相談役、評議員。東京理科大学非常勤講師。社会保障審議会年金数理部会委員、年金部会委員等を歴任。現在、年金綜合研究所専務理事。
主要著作に、『生命保険実務講座』(共著、有斐閣、1990年~91年)、「科学教養講座・役に立つ年金数理入門」(『科学フォーラム』共著、東京理科大学、2005年)など。