ウォーレン・バフェット 華麗なる流儀

タバコリ,J.著/牧野 洋訳
2010年1月8日 発売
定価 2,640円(税込)
ISBN:9784492732687 / サイズ:サイズ:四六判/ページ数:512

【著者コメント】




 バフェットは他人から批判されたり、賞賛されたりしても、それに惑わさずに行動する能力を備えている。だからこそ、人々が危機におびえているときや人々がバブルに浮かれているときにも、平静でいられる。言い換えれば、自分自身の価値観に揺るぎない自信を持っている。それは、投資先の価値評価と同じように肝心なことである。

 私生活の面でバフェットは倹約家として知られている。しかし、わたしと会った際には寛大な精神を見せた。その後、精神面だけでなく金銭面でも偉大な寛大さを見せた。個人資産の大半を慈善財団であるゲイツ財団へ寄付し、巨大な富を社会へ還元する計画を実行したのである。

 本書が扱っているのは、アメリカの住宅市場で信用バブルがにわかに膨張し、そしてはじける期間である。バブルに踊らされて金融市場がパニックに陥った背景には、短期の利益を追い求める投機家の行動がある。本書では、そんな行動をバリュー投資の長期哲学と対比させてみた。金融市場は恐怖心やどん欲さで支配されているが、最終的に富を手に入れるのは長期投資の原則を堅持する投資家だ。

 日本にいようがアメリカにいようが、富を創造する有効な哲学がある。自分自身の富ばかりか、他人の富も創造する哲学である。投資の世界では、それはウォーレン・バフェットの投資哲学として明示できる。

(「日本語版への序文」より)





【編集者コメント】




 偉大なる時代診断家バフェットの実像を克明に描く


 世界の大富豪にして稀代の投資家ウォーレン・バフェットを知る者はとにもかくにも多い。関連書籍も多く出ている。だが、警醒家として、あるいは義の預言者としてのバフェットの姿を知るものはほとんどいない。本書は時代趨勢を巨大な視野から道破する時代診断家としてのバフェットを克明に描く稀有な書物の部類に入るといってよいであろう。

 彼は金融の中心地ウォール街から2000キロ余も離れたオマハから経済の行く末をあまりに的確に洞察していた。その証拠に、2003年にして、「デリバティブは金融版大量破壊兵器」と述べ、潜在的な破壊力と危険性を説いてやまなかった。警告が見事に的中したのは5年後、ご存じリーマン・ショック以降の経済危機によってである。

 バフェットの人となり・洞察力に親しく接した著者による真実の観察記録とも呼ぶべきものが本書である。著者とバフェットは「危機は本物」との意識を共有し、定期的に意見交換するようになる。危機状況の描きぶりは、まさにバフェットの魂が著者に憑依するがごとく相当に手厳しい。

 たとえば、ウォール街の「顔」ともいうべき投資銀行の所業は「金融史上最大のネズミ講」と一刀両断。債務担保証券の濫造を称して「覚醒剤製造工場」などの筆の冴えようである。良識ある者ならば、思わず「よくぞ言ってくれた」と内心快哉を叫ばずにいられなくなる二人の息の合ったコラボレーションぶりである。

 本書から滲み出てくるのは、世界を構成し動かすものとは巨額の資金でも政治権力でもない、血の通った一人ひとりの人間であるということだ。それはつまるところ「ふつうの人々」が何を感じ何に価値を見出すか、というごくシンプルな世界観の反映にほかならぬということでもある。一読者としてかかる姿勢に対し心から共鳴せざるをえない。

 本書中に見られるバフェットの名言・寸言からも、彼の見方・考え方は明瞭に窺い知られるはずである。――井坂康志


[バフェット語録]

・「ビジネスの世界で最も危険な言葉は、5つの単語で表現できます。『ほかの誰もがやっている(Everybody else is doing it)』です」

・「自分自身の行為が地元紙の一面で報じられる場面を想像してください。気楽に記事を読めるか、それとも恥ずかしい思いをするのか、これが判断基準です」

・「わたしは価格が異常な時にしか取引しません。ですから、私と取引する気ならば、価格を見誤っているということです」

・「扱いにくい人と取引すべきではない。世の中には、取引相手になってくれる人はいくらでもいる。自分の価値を認めない人たちのために、貴重な時間を無駄にする必要はない」

・「言行で示される経営姿勢は、これから企業文化をはぐくむうえで最も重要な要素です」

・「投資家として誰でも判断で誤ることはあります。でも、心配の必要はありません。大失敗をしないように注意していればいいのです。大失敗さえ避けていれば、正しい判断をたくさん下す必要もないのです」

・「悪い企業を良い経営者が率いているよりも、良い企業を悪い経営者が率いているほうがいい」

・「損失額の見積もりは自分でやります。モデルは使いません」

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概要

全米が住宅バブルに踊る狂乱のさなか、天才投資家バフェットはその覚醒した目で世界をどうとらえていたのか。著者との個人的な交友を通して初めて明かされる「オマハの賢人」の真実。

目次


第1章 ウォーレン・バフェットに会いに行く
第2章 人生を変えたランチ 
第3章 草原の王子と暗黒の王子
第4章 飽くなき好奇心
第5章 狂気の住宅ローン
    ──借り手の弱みにつけこむ人々
第6章 いかさま賭博に気をつけろ
第7章 「墜ちた星たち」のトリプルA
    ──金融版占星術に憑かれた人たち
第8章 ベアー(弱気)市場で何が起こったか
第9章 デッド・マンズ・カーブ
    ──死を呼ぶ急カーブ
第10章 バズーカ・ハンクと不吉な企み
第11章 メーンストリートがやけどする
第12章 カネ!カネ!カネ!!
    ──バフェットと政治の微妙な関係
第13章 迷走する世界とどう向き合うか
第14章 真実の価値を求めて

 

著者プロフィール

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ジャネット・タバコリ
Janet Tavakoli

シカゴの金融コンサルティング会社「タバコリ・ストラクチャード・ファイナンス(TSF)」社長。シカゴ大学で経営学修士(MBA)を取得後、ゴールドマン・サックスなど有力投資銀行で18年の経験を積む。デリバティブを専門にし、住宅バブルの崩壊をいち早く予測。ビジネスウイーク誌から「デリバティブのカサンドラ(凶事予言者)」との異名を付けられる。2003年に独立してTSFを設立、現在に至る。

著書に『仕組み金融と債務担保証券』『信用デリバティブと合成構造』のほか、邦訳されている『クレジットデリバティブ取引事例集』がある。

訳者紹介

牧野 洋
まきの ひろし

アメリカ在住の経済ジャーナリスト兼翻訳家。慶應義塾大学経済学部卒業、米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクール卒業(修士号)。1983年に日本経済新聞社に入社し、ニューヨーク駐在や編集委員を歴任。2007年に独立、現在に至る。

著書に『不思議の国のM&A』『最強の投資家バフェット』、訳書・解説書に『知の巨人 ドラッカー自伝』、訳書に『市場の変相』『ランド 世界を支配した研究所』がある。
ブログ:http://worklifebalance.justblog.jp