資金繰りに困ったナイトは、決してやるまいと思っていたことに踏み切る。知人を片っ端から当たって、救いの手を求めたのだ。
その窮状を目の当たりにしていた正社員第4号のウッデルが、融資を申し出る。
ウッデルは、将来を期待された陸上選手だったが、事故で下半身が不自由になり、車イスの生活を送っていた。
そんななか、ナイトと出会い、意気投合し、ブルーリボンのために献身的に働くようになっていたのだ。
ある日、どうしていいかもわからなくなり、私は座って定まらない視点のまま窓から外を眺めていた。ウッデルがノックして、部屋にさっと入ってきてドアを閉めた。彼と彼の両親が私に5000ドル融資する、嫌とは言わせないと言うのだ。利子についても何も問わないと。
事実、彼らは融資について書面を残すことも求めなかった。
ウッデルはこれからロスへ行く予定だが、自分が留守の間、私が彼の実家に行って小切手を家族から預ってくれと言う。
数日後、私はまさか自分にできるとは思えないことをした。そう、小切手をもらいに行ったのだ。
ウッデルの家が裕福でないことは知っていた。息子の医療費で彼らは私よりも生活に困っているはずだ。この5000ドルは命の貯金だ。それはわかっていた。
しかも、彼の両親にはもう少し蓄えがあって、もし必要ならばそれもと言ってくれたのだ。そして私はイエスと言ってしまった。虎の子の3000ドルを私に渡したために、彼らの貯金はゼロになった。
この小切手を引き出しに入れたままにして手を付けたくないと、どれほど思っただろうか。だができなかった。そうはしなかった。
ドアをくぐる時私は立ち止まって、彼の両親に聞いた。「どうしてここまで?」
母親が答えた。「だって自分の息子が働いている会社を信用できなかったら、誰を信用できるっていうの」